薔薇と薬莢 ページ18
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⎯⎯⎯次に目を覚ましたのは、酷く懐かしい匂いの中だった。知らない甘い香りの中に確かにあるその懐かしさは、ずっと昔には当たり前のように傍にあったもの。
｢寒かっただろ。ほら、手。繋いでやる｣
｢太陽を知らない？ なら、俺が見せてやろうか｣
懐かしさにつられて、遠い昔に聞いた幼い声まで思い出してしまった。その声が記憶に眠っていたものだと分かっていても私の手は勝手に宙へと伸びる。勿論掴めるものは何もなくって、指の隙間を空気が抜けると同時に閉ざされていた瞼を押し上げた。
｢……何をしている？｣
まさか疑問の声が飛んでくるとは思いもしなかった。動揺を隠しつつ仰向けのまま視線を横へと向けると、何と隣にグルッペンが寝転んでいるではないか。よく見ればふたりが居るのはベッドの上。ここは、私の部屋ではないようだ。
｢……いや、君こそ隣で何をしているんですか、グルッペン｣
｢本を読んでいただけだが？｣
｢寝っ転がりながら読書なんてお行儀が悪いですね。ところで何故、私と君が同じベッドに？｣
｢お前の私室に鍵が掛かっていたせいだ。気絶したお前を廊下に放って置く訳にもいかんやろ｣
｢お気遣いと手当までどうも……｣
｢ああ｣
ズキズキと痛む頭に触れるとそこには包帯が巻かれていた。そうだった、トントンさまを追い回して、ゾムに叩きつけられて⎯⎯⎯犬を見たあと本当に気絶したらしい。となるとここはグルッペンの私室か。そりゃあ懐かしい匂いがするわけである。
｢元気になったので自室に戻ります。では、｣
｢戻る必要はない、今夜はここにいろ｣
｢は？ いや遠慮します｣
｢ドアの外には見張りの番犬がいるゾ｣
｢…………ここで朝まで眠るとしましょう｣
｢懸命だな｣
どうしてこんな男と一晩を過ごさにゃならんのか。私たちの間に確かに残る蟠りをまるで無いように振る舞うグルッペンが無性に腹立たしい。かと言ってソファーで寝てやるのも何だか悔しいから、グルッペンに背を向けぎゅっと目を瞑る。
静かな部屋にパタン、と本の表紙が閉じられる音が響いた。それから灯りが消され、私の肩にそっと布団が掛けられる。⎯⎯⎯広いベッド、君と、ふたりきりの夜。否が応でも蘇る古い記憶から逃げるように、私はいっそう強く目を瞑った。
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紫紅兎(プロフ) - 夢主ちゃんのキャラがちょうどいい感じに濃くて素晴らしいですね！tntn様との絡みも大変微笑ましいです…過去に何があったのかも楽しみで色々考察しちゃいます、読むたびにマフィアパロって良いなぁと堪らなくなります、更新楽しみにして待ってます (2021年7月3日 1時) (
レス) id: fcae62d2ac (このIDを非表示/違反報告)
リノ(プロフ) - あの………語彙力ないので簡潔にまとめるとですね……………とっっっっっても好きです。 (2021年5月27日 19時) (レス) id: 19366b94fd (このIDを非表示/違反報告)
リュウ - ヤベェおもしれぇですよ(？)更新頑張って下さい！！！！好きです！！！ (2021年5月24日 22時) (レス) id: fa1fb43e66 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - 夜空さん» 夜空さん、ｺﾒﾝﾄありがとうございます~~！ かなりｷｬﾗが濃い夢主ちゃんなので尊いとまで言っていただけてとっても嬉しいです！ ゆっくりではありますが更新がんばります~~！ (2021年5月16日 20時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(プロフ) - ゆゆゆゆゆ夢主ちゃんが尊い(*´ω｀*) そうゆう性格の女の子の方が私は好きだよ←(何目線??)更新頑張って下さい!!!!! (2021年5月15日 17時) (レス) id: 947663e2d0 (このIDを非表示/違反報告)
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