【d!】幼馴染と恋する方法【tn】

若葉の恋 ページ43

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｢……何しとんねん、A。先に帰る言うとったやろ｣


　トントンが私を呼ぶ。そうしてそれに引き摺られるようにしてもたもた、教卓の下から頭を覗かせたのはやはりあの頃の私だった。ああそうだ、私、ここに隠れててふたりの会話を偶然聞いてしまったんだ。


｢へ、へへ、ふたりのこと驚かせようと思って…隠れてたんだけど…くしゃみ出ちゃった｣

　こちらも気まずそうに視線が右へ左へ。

｢いや、丁度いい。話は聞いてただろ｣
｢んぇっ！？ わ、わたしはなにも、｣
｢なら今聞け。

⎯⎯⎯A。お前が好きだ｣


　下手に飾らず、ストレートに思いを吐くグルッペンはらしいといえばらしいのだろうか。それが告白なんてものでなければ。

　湯気がたちそうな程に顔を真っ赤にする私をグルッペンは酷く優しい表情で見つめていた。しかし隣のトントンはといえば、友人らの恋路を応援するような雰囲気ではない。複雑そうに、きゅっと下唇を噛んで顔を俯かせていた。


｢……す、すき、やき？｣
｢好きだ｣
｢っちょ、｣
｢お前はどうだ、A｣
｢や、あの……これ、夢？｣
｢夢じゃないと分からせてやろうか｣
｢いひゃいっ！？｣


　とぼけようとする私の頬を抓りあげたグルッペンだって僅かに顔が赤くって、そんなやり取りを見ながら｢これがアオハルか…｣なんてため息がでてしまう。あの頃は若かった。本当に、そう。

　高校生になってからトントンとグルッペンが仲良くなって、トントンの幼馴染である私も自動的に一緒にいることが多くなった。グルッペンはかっこいいし、優しくはないけど面白いし、正直少し好きだったかもしれない。けれどその時の私は⎯⎯⎯幼馴染に、恋をしていた。


｢ご、めんなさい。その、わたし…っと、とんとんが！好きなの！｣


　叫んだ告白にトントンが目を見開く。グルッペンは振られたのに何故か笑っていた。｢知っとる｣なんて小さく言いながら。


｢だから、その｣
｢……ちゃうよ。Aが俺を好きって言うんは幼馴染としてって意味や、な、そうやろ？｣
｢……え、？｣
｢よかったな、A。腹立つけどグルッペンの奴結構モテるから、周りに自慢できるやん｣


　今度は私が目を見開く。少し苛立った様子で口を回すトントンは、私とグルッペンの仲を取り持とうとしている風だった。違う、私は本当にトントンのことが好きなのに。



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