君を思えば ページ31
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あっという間に週が明け、またいつも通りの仕事に追われる平日へと戻った。こうもあっさり戻ってしまうと昨日のデートがただの夢だったように思えてしまう。
｢聞いてやAちゃん、週末散々やってん｣
｢毎週末で地獄見てない？鬱くん｣
｢はは、言わんといてや｣
そんな日常から早くも逃げだし、社内の喫煙所へと篭ったお昼。居合わせた鬱は毎度の事ながら壮絶な休日を過ごしたようで、心底うんざりだといった顔で愚痴をこぼす。せっかくの休憩時間にそんな話を聞かされる私の方もうんざりだ。
｢で？何やらかしたの｣
｢ダブルブッキング｣
｢下半身のスケジュール管理くらい危機感持ってやりなよ、頭いいのに結構ばかだよね｣
｢いやいやただのデートな？｣
｢……デート、かぁ｣
そういえばここにデートのスペシャリストがいるじゃないか。鬱に聞いてから誘えばよかった、なんて今更後悔。
｢あー、やっぱ思い出すだけで震えるからやめとこ。それよりAちゃんは週末何しとったん？｣
｢デート｣
｢まさかもう後釜見つけたん？｣
｢いや、トントンと｣
｢なーんや。いつもの幼馴染ごっこ、｣
｢ううん、恋人みたいなデートしたんだ｣
｢お、｣
ゆっくり、吐いた煙を視線で追って、昨日を思い返す。結局ゲームセンターに行った後はいつもと変わらない調子で買い物をして、色気もなくラーメンを食べて、帰ってまたゲームをした。けれど外を歩いている時には結んだ指を離さずに。
恋人のようで、いつも通りの幼馴染ようで。中途半端なデートをしたわけだけれど、案外それくらいが気楽で心地よいと気づいてしまった。
｢……んふ、嬉しそうな顔するやんか｣
｢そう？｣
｢おん。妬いちゃうくらいな｣
｢や、？｣
口に煙草を運ぼうとした手が突然、鬱の手に捕まれ止められる。驚いて足元窓の外に向けていた視線を手元に戻すと、目と鼻の先で藍色の瞳がちかりと光っていた。
｢ちかい｣
｢な、このままキスしてもええ？｣
｢いいけどトントンとグルッペンに言うよ｣
｢アッ、それはちょっと｣
｢なら、｣
｢けど、これが俺やなくてトンちやったら？｣
｢え？｣
｢Aちゃんはどう思うんかな｣
ちゅ、とわざとらしいリップ音を私の頬に残して鬱が離れてゆく。トントンだったら、？なに、それ。
｢……｣
｢ふは、可愛ええ顔になったなぁ。ほんま、妬ける｣
藍が赤になったのを想像してしまって、途端に心臓が揺れた。触れられた頬が、あつい。
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違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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