乙女の意地 ページ3
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｢ねえ、とんとん｣
｢うん？｣
｢わたし、ほんとに……かなしかったよ｣
微睡む脳が上手に口を回させない。けれど、私を馬鹿にするトントンにちゃんと言ってやりたかった。
｢すきだったの。うそなんかじゃ、ない｣
｢……分かっとるって｣
たった数ヶ月のお付き合い。それでも確かに、私はあの人のことが大好きだった。まるで学生の頃に戻ったかのように、ただ純粋に。
｢そういうとこも、お前の悪いとこやんなぁ｣
｢どういうとこ？｣
｢染められやすいとこ｣
｢……｣
そう、かも。なんて押し黙ってしまった。
｢お前はそんなに悪いやつでもないで｣
｢しってる｣
｢うそ、やっぱ悪いわ｣
｢とんとんよりマシ……｣
｢そうかもな｣
うそ、トントンだってそんなに悪いやつじゃない。私が誰よりも知ってる。
｢わたし、トントンと付き合いたい。わたしは誰よりもトントンのこと知ってるし、逆も然りだし、きっと気楽だよ｣
｢それは勘弁｣
｢……え、私いま、振られた？｣
｢せやな｣
｢……むかちん｣
｢なんなん、そのむかちんて｣
思わず眠りに落ちかけた脳に鞭打って飛び起きる。そうしてソファーで向かい合い、顰めっ面を浮かべるトントンの手をぐにっと抓りあげた。
｢いたい。暴力的な女はモテへんよ｣
｢どうせ彼女いないし、童貞だし、いいじゃんか。私と付き合おうよ｣
｢嫌やって。なんで俺がお前と｣
｢そんな頑なに拒む！？｣
｢おう｣
ぱきり、と心がひび割れた気がした。
振られたばかりでまた振られた。それも、誰よりも気を許す幼馴染に。
｢泣きそう……｣
｢まだ泣けるんか、底なしやな｣
｢〜〜〜っばあか！ほんとにほんとに、ばあか！｣
｢馬鹿はお前や。はよ寝ろ｣
トントンの寝巻きを引っつかみ、そのまま柔いお腹に泣きついた。トントンにだけは、突き放してほしくなかったのに。最後の砦がガラガラ、崩れ去る。
｢いいよ、いいよ。トントンがそのつもりなら私にだって考えがある｣
｢ほう、聞いたろか｣
｢……宣戦布告する。わたし、Aはこれより乙女の威信をかけて⎯⎯⎯｣
幼馴染を、落とします
自分でも笑うくらいに覇気のない声をトントンのお腹にくぐもらせた。何言ってんだろ私、なんて呆れながら。勿論冗談のつもりで。
｢っふは。悪いけど、俺はお前を幼馴染以上には思わへんよ｣
そんな挑発的な返事さえなければ。私はまたいつものように寝て、起きて、忘れてしまっていただろうに。
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るな？ - 序盤のほうからめっちゃ泣けてました！ドキドキもあるけど感動って作者様神ですか！？ (2022年3月5日 2時) (
レス) @page50 id: 12ba396496 (このIDを非表示/違反報告)
猫大好き - めっちゃ遅れました。完結、おめでとうございます!!私も、成功するかわかんないけど好きな人に、好きって言う勇気が付きました。ありがとうございます!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: 932515d6d7 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - もちたさん» もちたさん、こちらこそ最後までお付き合いいただきましてありがとうございます〜！みんなドキドキしてくれ！の精神で書きなぐっていたのでそう言ってもらえてはちゃめちゃに嬉しいです…！本当にありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぷ(プロフ) - ネこさん» ネこさん、コメントありがとうございます〜！イッキ見！楽しんでいただけたようでとっても嬉しいです…！最後までありがとうございました！ (2021年1月28日 22時) (レス) id: def2dae9c2 (このIDを非表示/違反報告)
もちた - ちょっと遅れてしまいましたが、完結、おめでとうございます...!こんなにドキドキできた作品は初めてです...本当に...ありがとうございます(た)...! (2021年1月26日 20時) (レス) id: d31df64977 (このIDを非表示/違反報告)
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