important:19 ページ39
・
交番勤務を終えて、研二は警視庁に配属された。
家に泊まりに来ることも二人でどこかへ出かけることも格段に少なくなったが、
生来淡泊な性格のおかげで寂しさからくる怒りのようなものは特になかった。
研二は毎日のように寂しい会いたい大好きなどメールを送ってきたり電話をしてきたりすごかったけど。
そんな生活に終止符を打ったのは一年近く経った頃だった。
「ただいま……」
「おかえり〜」
玄関の扉を開けるとカレーのいい匂いと今日は休みだった研二が出迎えた。
「ご飯よそっとくから着替えてきなー」
「はーい…」
私の大学卒業と就職を機に研二が家に転がり込んできて早数ヶ月。
就職先の会社が今住んでいるところから遠すぎず、引っ越しも面倒だからとしなかった。
研二からの同棲の催促に対して、仕事に慣れて生活も落ち着いたらがいいからあと一、二年先かなと言ったらこうなった。
慣れない環境や生活に疲れているときに身近に研二がいるというのはいつの間にか私の癒しや強みになっていた。
「社会に出てからね、よく思うことがあるんだけど」
「うん?」
カレーを食べながら疲れてぼーっとした頭でぽろっと零れた本音。
同棲するようになって、一緒にご飯を食べることが増えた。それが少しずつ当たり前になっている日々。
「研二ってすごいなぁって」
「そう?」
不思議そうな顔でこちらを見る研二に言葉を続ける。
「研二の仕事に比べたら私の仕事はそんな大変ではないと思うの。それなのに毎日しんどくて。
研二と同棲してるおかげでなんとか毎日頑張れてる感じです。
でも研二は去年とかほとんど一人で仕事頑張ってたんだと思ったら、すごいなぁって」
研二がどんな仕事をしているのか詳しくは知らない。
でも大抵疲弊し切った状態で帰宅するし、体を鍛えてる場面をよく見るし何より目に見えて筋力がすごい。
かなり体を酷使することをしてるのかなと予想はしている。
「あー…あんまりAに会えてなかった日々…懐かしい」
「社会人になってから研二の気持ちがちょっとわかってきた」
「それって毎日俺に会いたいと思ってるってこと?」
にやにやと揶揄う表情に正直に言ってやるものかと綺麗になったお皿の前でご馳走様でしたと手を合わせスルーすると
「誤魔化すな」「照れてる」とおかしそうに笑われた。
176人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時