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「え、何急に」
突然何事だとぐでっと上半身を寝そべらせる萩原に視線を向けても顔を伏せてしまっているから気づかれない。
「俺に気許してくれてるのは嬉しいんだけどさぁ」
「うん」
「俺も一応、男なんですよ」
「知ってますよ」
私よりも下に萩原の頭があることが珍しくて晒された無防備な旋毛を見つめる。
「突然吉岡のこと襲う可能性だってあるんだからな」
「でも萩原はそういうことしないでしょ」
「……しないけど」
机と額の間に両腕を組んで差し込み俯いて話しているからくぐもって聞こえる声はどこか不貞腐れているような不機嫌そうな。
拗ねた子供が目の前にいるようで思わず手が伸びる。
「俺的にはちょっと……複雑」
「なんで?」
私の手が頭に触れるとすぐに萩原は俯いていた顔をあげた。
カチリと目が合う。
「俺、まあまあモテるんですよ」
「知ってる。高校のときよく告白されてたよね」
まるで子供をあやすようにやわやわと頭を撫でる。
「だから、男として見られてないと思うと悔しいっていうか…でも信頼されてるのかと思ったらそれはそれで嬉しいし…」
男のプライドみたいなものがせめぎ合っているのかな。
よくわからないけど、でももにょもにょと口を尖らせて話す姿を可愛いなぁと思った。
「萩原のこと信頼してるよ」
「んー……」
微妙そうなむっとした顔。
いつも物腰が柔らかくニコニコしている萩原がこれほどあからさまに不機嫌さを前面に出しているなんて珍しい。
無意識に萩原の頭をわしゃわしゃ雑に撫でる。
「萩原のこと信用してるから家に呼んだんだよ」
「おー…」
「いきなり迫ってきたりしないだろーって」
「んー…」
「まー、迫ってこられてもいいかなーって思ってる部分もあるからなんだけどね」
「…は?」
切れ長の涼し気な瞳がまん丸く大きく開いた。
ポカンと間抜けな表情に思わずふはっと吹き出すと萩原はがばりと体勢を起こす。
目線の高さが同じくらいになって離れてしまった頭を撫でていた手は行き場をなくし、仕方なしに自分の頬に移動させ頬杖をついた。
パチパチと目の前で何度も瞬きをする萩原がおかしくてまたふはっと吹き出してしまった。
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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時