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liqueur:15 ページ17

咄嗟に嘘、と溢してしまいそうになって呑み込んだ。

何も考えられない。思考が停止するってたぶんこういうこと。耳で拾ったはずの言葉がなぜか理解できない。


あの人たちはもういないの?降谷くん以外誰も?本当に?これは現実?


浮かんでは消える疑問。それらは無意識にするりとこぼれ落ちそうになり生き残った冷静な部分で喉につっかさせえる。

アルコールも加わってドクドクと逸る心臓が痛い。


みんな、いなくなってしまったんだ。


呑み込めない現実は彼が揺らすたびにぶつかるグラスと氷の軽やかな音や店内のゆったりとした音楽と共に少しずつ少しずつ私の中に浸透していく。


「…そうだったんですね」


なんて当たり障りのない返答が喉奥から出た。じわじわと現実を受け入れ始めた。

他に何か、たとえば気の利いた言葉とか見つからなかったのかと思うけどでもじゃあ何て言えばよかっただろうと自分の返答に悶々としていると


「Aさんってあんまり踏み込んできませんよね」


脈絡のない彼を思わずぎょっと見た。


「…唐突ですね」


すみませんと笑い、


「なんというか前に僕の家で話したときも、今も。理由を聞かれないなと思って」

「理由、ですか」

「たとえば、今の会話。彼らがなぜ亡くなったのか気になりませんか?」


さながら探偵のように。たしか安室透は探偵をしてるって言ってたっけ。頭の端っこでふとそんなことを思い出す。


「…わからないです」

「わからない…?」


ぎゅっと両手でグラスを握る。脳裏にはあの頃の彼らの姿。


「気にならないから聞かないわけじゃないんです。ただ降谷くんから話してくれるならまだしも私がズケズケとなんで、どうしてって聞くのは違うかなって」


たぶん酔いが回り始めた。思考と口先が一直線だ。思ったこと全部零れてしまう。


「それに気軽に聞けませんよ。相手にとって大切な人なら尚更…」


あれ。なんでこんな話してるんだっけ。


「…Aさんって」

「はい?」


ハッとして反射で隣を見たら降谷くんは俯いていた顔をあげ、


「そういう方なんですね」

「は?」


笑いかけたかと思うと彼はグイっとグラスを傾け一気に残りを飲み干し「さきほどと同じスコッチソーダを」と二杯目を頼んだ。




………え?

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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時

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