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「この後お時間ありますか?」
早めに帰社できた日のルーティーンになりつつあるポアロでの食事。
ペコペコのお腹を何で満たそうかと数分メニューと睨めっこしてようやく決めた料理が彼によって運ばれてきたとき。
こっそりそう耳打ちされた。
反射的に慌てて頷くとたぶん彼は少し笑った。
「僕もうすぐ上がりなのでよかったら飲みにいきませんか」
それに対しても慌てて頷き、そして全く状況把握できないまま
「ここ、よく来るんです」
「おぉ…」
今に至る。
あれよあれよという間に気付けば洒落たバーにいた。
こんなところあんまり来たことないな〜と年甲斐もなく店内を見回していると
「Aさん?」
「あっごめんなさい」
名前を呼ぶ彼の隣に急いで着席する。
けど、何なんだこの状況。
なんで降谷くんとお洒落なバーに来てるの。どういう状況よこれ。
まだ頭が追い付いてきてないのに彼は何にします?なんて聞いてくる。
「…カシオレお願いします」
「僕はスコッチソーダを」
バーテンダーさんにそれぞれ注文してから私たちの間に訪れたのは沈黙。
先日帰り際に彼が言った『飲みにでも行きましょう』なんて言葉は社交辞令だと思っていたのにまさか現実になるなんて。
いつでもいい。いつか。共通の人物の思い出を彼と話せたら。なんて露ほどの期待が今叶いそうになってる。
そんな突然の状況をすぐに呑み込めるわけない。せめてもう少しゆっくり現実味を帯びてほしかった。
口を開かずうだうだと考え込んでいると目の前に頼んだお酒が置かれた。
…気まずいしとりあえず飲むか。
多めにお酒を流し込んでから隣の彼を盗み見るとグラスを見つめている。
彼の横顔を見てなんとなく、そういえば他の人はどうしているんだろうとふと思った。
「安室さん」
目が合い彼の口元がゆっくり弧を描いた。
「ここでは降谷で大丈夫です」
「あ、そうなんですね…」
ここ外なのに大丈夫なんだと思いつつ私にとって懐かしい人たちのことを聞いてみた。
「あの、他の方たちは元気ですか?松田くんとあと……伊達くんと諸伏くん」
記憶に自信がなく語尾にでしたっけ?と自嘲気味に付け加えた。
「みんなもういなくなりました」
「え?」
遅れて、けれど彼の表情ですぐにその意味を理解した。
ひゅっと一瞬心臓が止まる。
カランと動いた氷の音がやけに頭に響いた。
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理那(プロフ) - ありがとうございました。本当に素敵なお話でした。 (2020年7月7日 16時) (レス) id: db0db57d74 (このIDを非表示/違反報告)
かものはし子(プロフ) - お萩さん» コメントありがとうございます(*^^*)頑張っていきます! (2019年5月17日 22時) (レス) id: e4c7a737a2 (このIDを非表示/違反報告)
お萩 - わー!とっても素敵ですね!ふるやさんこわーい「棒」 これからも頑張ってください (2019年5月17日 20時) (レス) id: c0a94bdd1a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かものはし子 | 作成日時:2019年5月16日 3時