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あれから、約1ヶ月が過ぎた。
「今日も大変だったね〜」
「ソンチャン目当ての女の子、全然帰らないから…」
「やっぱり俺目当てだったのか…」
今日もバイト先は大繁盛で、心做しか以前より女性の客が増えた気がする。
「うーん、でもチャニョンも毎日ここに来るからってのもありそう」
『えぇ、僕…?』
衝撃的な出会いから、1ヶ月。
チャニョンは英会話のバイトを始め、私がバイトの日は必ずカフェへ来て閉店まで居座ると私と一緒に帰る、そんな日々が定着している。
大人しく勉強したり、たまに手伝ってくれたり、1人で音楽を聴いていたりするチャニョンはまるで某ハチ公のようだった。
『Aヌナ、今日の晩ご飯はキムチチゲにしよ』
「チゲいいね」
「いつも晩飯Aが作ってんの?」
「うん。チャニョンに包丁握らせたら地獄みるよ」
『へへ』
「褒めてないからね」
ふーん、とニヤニヤ笑いながら何か言いたげなソンチャンをモップで軽くあしらう。
1ヶ月の間で、あまりにも仲良くなったと思う。
最初は勿論、うまくやれるかな、とか、喧嘩したらどうしよう、とかそういった不安しか無かった。
だけど実際一緒に過ごしてみると、あまりにも過ごしやすくてびっくりするレベルだ。
何かを言う前にお互いが動いていて、心地よい気遣いと優しさがお互い足りないところを埋めていくような感覚。
『Aヌナ〜』
「お待たせ!あとはソンチャンがやってくれるから、チャニョン、帰ろっか」
『お先に失礼します』
「え!?」と驚いてるソンチャンを横目に私たちは退店し、いつもの道を2人、以前よりも近くなった距離で歩く。
『ヌナ、明日から学祭じゃないですか。ヌナが時間あったら一緒に回りたいです』
「うん、私も誘おうと思ってた」
10月も終わりに差し掛かり、カラッとした秋風が私たちを包むと、チャニョンは少し上から私を見つめて微笑んでいる。
冷えた体がまた少し暖かくなるくらい心臓が早く動くのに気付かないふりをした。
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作者名:天然水 | 作成日時:2024年2月18日 23時