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一瞬の沈黙。最初に口を開いたのは土籠先生だった。
「それで何の用ですか、七番サマ」
「あ、そうそう! とりあえず境界入れてよ」
「ハイハイ」
先生は本棚に近寄って、とある本に触れる。すると、ボンと煙が上がり、さっきまではなかったはずの扉が現れた。
「oh......すごいなこの学園は……」
扉を開け、中へ入っていく二人に着いていく。扉の中には、見上げるほどの高さがある本棚がズラリとどこまでも並んでいた。
「ほぇ〜、これ全部この学園にいた人の本ですか。凄い、圧巻ですね」
「(ミョウジ)は自分の本を読んでみたいとか思わないの?」
花子くんに言われて、自分の本もここにあることに気が付いた。一瞬探してみようかなんて思ったが、興味はすぐになくなっていった。
「んー……私はいいです」
「ふーん、なんで?」
なんでだろうなー、と今更理由を考える。
「だって私、もう死んでるし」
特に深い理由はなかった。本当にそれだけだった。
「過去の出来事読んだって、余計に成仏出来なくなるだけですしね」
「うん、それがいいよ」
花子くんは笑っていた。しかし、そこに楽しい嬉しいといった感情は存在していなかった。
花子くんと過ごしてかなり経つが、彼には私が知るべきではないような過去が沢山あるんだろう、ということは何となく分かっていた。生憎、私は察しがいい方で、好奇心だけで動くような物語の主人公的な気質は持ち合わせていない。きっと彼を救うことが出来るのはもっと別の存在のはずだ。私がどれだけ彼に情を移したとしても、私のようなこれから消えるだけの幽霊が出しゃばるべきではないのだ。
「(ミョウジ)? どうしたの、真剣な顔して」
「あ、や、なんでもないです!」
「そお? ならいいけど」
そう言って花子くんは私の元を離れていき、先生の方へ駆け寄っていった。
「土籠、ちょいちょい」
花子くんは先生に耳を貸すように促した。先生は少しだけ面倒そうな顔をしたが、素直に腰を曲げた。花子くんはコソコソと耳打ちをする。すると、先生はさらに面倒そうな顔をして、花子くんから顔を離した。
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シズ - 見ながら爆笑してしまいました(笑) 続き楽しみです (2022年8月22日 2時) (レス) @page46 id: 7fbee373af (このIDを非表示/違反報告)
被苦人(プロフ) - ニコさん» そう言って頂けて嬉しいです! 分かります! 土籠先生攻めいいですよね…ネタがあればまた書こうかなと思います! (2020年3月3日 7時) (レス) id: 2d39e952a2 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ - 好きです!個人的には土籠先生攻めも結構好きです (2020年3月3日 2時) (レス) id: 40dba85962 (このIDを非表示/違反報告)
被苦人(プロフ) - 腐った人間さん» 自給自足の為に生み出したものなので、他の同士にも供給出来て嬉しいです! 正直この作品はノリだけが命なので、そう言って頂けて良かったです! 拙いですが、これからもお付き合い頂けると嬉しいです! (2020年3月1日 16時) (レス) id: 2d39e952a2 (このIDを非表示/違反報告)
腐った人間 - あ、好きですショタの供給ありがとうごさいます最高です()ノリがよくてすごく読みやすいです!これからも頑張ってください! (2020年3月1日 15時) (レス) id: a770919e54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:被苦人 | 作成日時:2020年2月10日 10時