ウンディーネの泪

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風もなく動くはずの無い水が

突如天に向かって吹き上がったのに

慌て驚く様子も見せず、当たり前かのように

布地を差し出した彼に少しだけ違和感を感じた。

普通の人間ならこんな反応にはならない。

だから、わざと引っ掛けるように話してみたのだ


「まさか…初めて会ったあの日、
本当は見ていたのね…？」

JN「っな、なにが！？」

「…」


動揺して左右に揺れた目を合わそうとせず

こんなに分かりやすい反応…間違いないだろう。

思わず笑ってしまいそうになるが、

少しいたずら心が疼いたから真剣な顔で続けてみる

「ジン…見たのよね？」

JN「…うん。見たよ」

「じゃあ…知ってるんだよね？
私が普通の人間ではない事」

JN「でも僕はたとえAちゃんが何者であっても
君を好きな気持ちに変わりはないよ。

僕の勘違いじゃなきゃ良いけど…」

「えっ？ちょっ、」

突然グッと顔が近づいてきて、

彼の整った顔が目の前に現れる。

鼻先が触れそうな程の近さに恥ずかしくなって

体温が一気に上がって体が熱くなる。

呼吸をするのも戸惑うほどの近さだ

JN「ふふっ…Aちゃんは僕のこと嫌い？」

「そ、そんな事ないっ」

JN「じゃあ僕のこと、好き？」

「っ！」

JN「…教えて、聞きたいんだ」

眉を下げて微笑んだジン

そんな顔で見つめないで…

いつの間にか逆転している立場に気づきもせず

互いを見つめ合う瞳に熱が篭っていく。


この言葉を言うには、相当な勇気が必要だ。

本当なら気づきたくは無かった気持ちだから、

でも心に嘘はつけない…

こんな風に目の前で気持ちをぶつけられたら

もう抗うことなんて出来なかった。


「…き」

JN「ん？」

「…好き」

JN「っ、もう1回言って」

「好きよ、ジン。貴方がす…っ」

言い終わる前に重なった唇に心臓が飛び跳ねた

JN「…はぁ、ごめんっ、嬉しくてつい」

「ちょっ、なっ、だ、誰かに見られたらっ」

JN「誰も来ないって言ったのはAちゃんだよ」

「そ、うだけど…」

JN「どうしよ…今更恥ずかしくなってきた」

「私だって…」

JN「ねぇ手出して？」

そっと繋がれた手を優しく握ると

目の前で膝を付いて私を見上げたジン。

JN「これから先どんなことがあっても、
この手を離さないと約束するよ。

僕の恋人になってください」

「はい、喜んで」


誰かを好きになるのに、きっと種族は関係ない

きっとこの先何かあっても、繋いだこの手の強さが

私たちに勇気をくれるはずだから。

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