桃色の指先と翡翠の憂鬱 43

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川｢もう1本登っても良いですか？｣

照｢どうぞ。リョウ、こっちの黄色コース離れてるから登ってみたら？｣

佐｢赤飛ばして黄色いっちゃう？｣

阿｢待って、ルート読むね｣

佐｢あべちゃん、俺登っていい？｣

阿｢うん。佐久間の登り方参考にするね｣


佐久間は何でも実践して学ぶタイプだ。

何度、落ちてもまたやり直す。

悔しそうにしてるけど、気にせずにまた登ってる。



佐｢ひかる、この先は？｣

照｢さっくんなら、右上に足かけて、左足をその小さいホールドで体支えられるよ｣

佐｢やってみる｣

体の使い方も上手いし、股関節と肩の可動域が広いから、俺なら無理な体勢でも登っていける。

佐｢やった｣

黄色コースを、ひーくんのアドバイスで登りきった。

佐｢登れると楽しい｣

照｢リョウ、読めた？｣

阿｢うん。やってみるね｣



赤い1番下のホールドを掴んだ時に、誰かのスマホが鳴った。

この音は、如恵留だ。


川｢はい｣

川｢わかった。すぐ行くから｣

川｢ごめんなさい。Cafeに行ってきます｣

阿｢如恵留？｣

川｢聴覚障害の方が来店してるので呼ばれました｣

佐｢のえちゃん、いってらっしゃい｣

川島先生はボルダリングシューズを履き替えて、エレベーターに乗った。

照｢聴覚障害？｣

阿｢如恵留、手話出来るから｣

佐｢しょっぴーいないもんね｣

照｢翔太も手話できるんだっけ｣

阿｢そう。斗真さんも出来るんだけど、斗真さんはアメリカで覚えたから違うんだよ｣

照｢俺も少し出来るよ。警察で手話講座ってあるから｣

佐｢見てくる｣

阿｢佐久間、見せ物じゃない｣

佐｢外から見るからいいでしょ。のえちゃんが頑張るとこ見たいの｣

照｢俺も見たいかも｣


2人がシューズを履き替えるから、俺も仕方なく履き替えた。

エレベーターに乗って、下に降りてガラス張りの横から中を覗いた。


川島先生が手話で話しかけてる。

相手の人も手話で応えてる。

佐｢あべちゃん読めるよね？｣

阿｢そんな事だろうと思った。普通にメニューの説明して好み聞いてる。オーダー取ってるだけだよ｣

照｢ありがとうって｣

佐｢のえちゃん楽しそうだね｣

阿｢バリアフリーCafeが立ち上げた3人の目的だからね｣


トイレは男女別ではなくて、1つの個室と、多目的トイレだし。

店内に段差をなくして、テーブル席のテーブルは車いすの人が利用しやすい高さになってる。

全部しょっぴーの発案だ。

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