夏 に 恋 し た 。2

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Aside。


.


何もかも手放して1から何かを始めるのは

きっと誰だって怖いこと。


だけど…



「こんな景色が見れるなら、

新しく始めることも悪くないなって」



横「…そっか」



「ありがとユウ」



横「いや、ええよ


もう遅いし帰ろか」



ユウの手を借りながら山を下りて

もう1度お礼を言おうと振り返った時には

彼の姿はなかった。


助けて…くれたから？


だからもう消えちゃったの？


夢みたいな不思議な時間を思い返していると

すごい勢いでこちらに向かってくる人が1人。



「えっ、なに…」



村「こんのドアホ！！！！」



ひっ、て肩を竦める。



村「どこほっつき歩いとってん！


心配するやろ！！」



いつの間にか落としていたらしい麦わら帽子を手に

墓地で私にガミガミお説教してくる男の子。



村「おまえは昔っから…」



「…もしかして信ちゃん？」



村「お？


ああ、せやけど…」



「信ちゃん！


久し振り！」



村「…ったく、憎まれへん奴」



ハァ…と大袈裟に溜息をついた信ちゃんは呆れた顔で私を見た後

帰んで、と私の手を引いて歩き出した。


.



村「ん」



「ありがと」



村「塩いらんのか」



「いらーん」



おばさんが洗い物をして

おじさんがお笑い番組を見る横で

縁側に信ちゃんと並んで座ってスイカを食べる。



「いいね、縁側」



村「ほーか？」



今日見た夜景を在るべき場所に帰したみたいな満天の星空が

私の曇ってた心を晴らしていく。


また会えたらいいのにな。ユウ。


.



横「よ」



「よ…？」



せっかくの夏休みやねんからもっと漫喫せえ！

と、もっぱらインドアな私が

信ちゃんによって強引に太陽の下に連れ出された。


貴重な部活のオフの日に

海で友達と一緒にはしゃぐ信ちゃん。


私はというと、昨日の山登りの筋肉痛が邪魔して泳げそうもなく。


岩場に座って無邪気に泳ぐ信ちゃん達を眺めていたところに

不意に現れたユウ。



「お願い事を叶えたらもう現れないんじゃないの？」



横「そういうもんなん？」



「やっぱり絵本とはちょっと違うんだね」



横「…大阪仕様になってんちゃう？」



「なるほどねー


そうやってこの世界に馴染んでるの？」



横「まあ…そんなもんやな」



「でも嬉しい」



横「え？」



「また会いたいと思ってたから」



素直な気持ちを伝えると

ユウの白い頬は季節外れの桜みたいに色付いた。

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