ダメ女と女子力男子【灰】

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「A」



少し前から、かるてっとさんは私を呼び捨てするようになった。

……おんぶしてもらったあの日から。覚えてないけど、私がそうしろと言ったらしい。



まじで私何言ってんの。酔ってるところも見られたし、ほんとに穴があるなら入りたいとはこの事。




『は、はい、なんでしょう』



まだ呼び捨てに慣れなくてドギマギしてる私とは真逆で、かるてっとさんはいつも通りだ。


はじめて「A」そう呼ばれた日からかるてっとさんは特に恥ずかしがることもなく、あたかも今までそう呼んでいたかのようにナチュラルに呼んできた。


この差に『私のことなんて、なんとも思ってないんだなぁ。』って少し落ち込んでみたり。




「今日休みだよな？ちょっと付き合って」

『……どこに？』

「買い物。とりあえず部屋で待ってっから、準備したら来て」



そう言ってかるてっとさんは自分の部屋に帰って行った。


いや、私まだ行くなんて言ってないし！


……………行くけど。




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かるてっとさんに連れてこられたのは、有名ブランドがたくさん入ってるデパート。



『何買うの？』

「誕生日プレゼント。Aに一緒に選んでもらえば間違いないだろ」



モデルだし、と付け足したかるてっとさん。



まあ一応流行ってるものとかはチェックはしてるけど、男の人にあげるものでしょ？私、役に立てるのだろうか。



そりゃ頼まれたからには真剣に考えるけど、私でよかったんかな。って心配になる。


男友達とかに聞いた方がいいと思うけどなぁ、



そう思ってはいるけど口には出さないのは、こうやって２人で並んで歩いていたいと思ってるからだ。「じゃあ別のやつに頼むわ」って言われたら悲しいもん。





「それに、こういうの頼めるのAしかいないからな」


………あーもう、この男は本当に。


きっとその言葉に深い意味はない。


それでも私の心を乱すには十分なもの。


心臓がうるさい。お願いだから、少し落ち着いて。



赤くなった顔をみられないように店を見渡すふりをして、かるてっとさんに背を向ける。


…とりあえず今はプレゼント選びに集中しよう。

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