DRAMATIC 7

5号車と仲直り ページ27

.



静まり返った夜空の下、ぽつぽつと光る街灯を辿って宛てもなく歩いている。


今から30分ほど前、この日も疲れて帰ってきた彼はいつも以上に不機嫌で、何を聞いても煮え切らない返事かだんまりを決め込んでいた。

『聞いてる？』
「聞いてるよ、うるさいな」

そう言って眉をひそめる彼に見兼ねて、頭を冷やす時間を設けるためにも半ば強引に家を出たのだ。


『…さっむい、』

季節が冬に差し掛かったせいか夜風が刺すように冷たい。咄嗟に羽織った彼のパーカーはちっとも暖かくなくて、ぶかぶかの袖をだらしなく垂らしたまま歩く。
しばらく歩いたところで「A！」と聞き慣れた声がして、振り向く間も無く背後からぎゅっと抱きしめられた。

「ごめん…なさい、」

少しだけ息を切らしながら呟いて、抱きしめる力を強める祐基。

「嫌な態度取ったよね」
『…落ち着いた？』
「うん、もう大丈夫、…A、」

抱きしめていた手を解いたかと思えば、背を向けていた体を彼の方へ向き直される。
そのまま顔を近づけて唇が触れそうな距離まで来ると、途端に冷たい風が頬をかすめて揃って小さく身震い。

「外だったこと忘れてた…」

そう言って決まり悪げに苦笑すると、同じように苦笑していた私の腕を引き寄せ、もう一度、今度はふわっと覆うように抱きしめる。

「…帰ったら続きしよっか、」

耳元で囁く声が妙に熱っぽくて、思わず息を飲んだ。


( 上機嫌な彼と指を絡ませて歩く帰り道 )

.

6号車は構ってちゃん→←4号車と夢

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す