伍拾肆 ページ7
昨日のことは、一度、頭の隅においておくことにした。
…これ以上考えると、なんとなく胸が張り裂けそうな気がしたから。
そして今日、私は晴れて蝶屋敷を退院し、甘味処に来ている。
ありがたいことに、宇髄さんが奢ってくださるんですって!
流石祭の神!
「宇髄さん聞いてください。時透くんが長期任務なんです。
私もう無理…」
目の前に置かれたずんだ餅に手を伸ばし、口の中へ運ぶ。
「お前、派手にこの先時透なしで生きていけるのか?」
「無理です。」
「おい即答やめろ。」
と、ジト目でこちらを見つめる宇髄さん。
その視線に応えるように、ずんだ餅を頬張る手を止め、湯呑みに手をかけた。
「いや、そもそもあんな美少年に惚れない人とかいるんですか??…いや、他のやつが時透くんに惚れるなんて、私が許さないですけど!!」
本音を吐き出すと、呆れた表情で私を落ち着かせる宇髄さん。
「おうおう、わかったから落ち着け、湯呑み割れるぞ。
お前時透のことになると怖えよな。」
という宇髄さんの言葉で、いつの間にか手に力が入っていたことを悟る。
コホンコホン。失礼しました。
「お前、口を開けば時透時透うるさいっつーのに、あいつのことは無一郎って呼ばねえのか?」
「はいっ!?」
宇髄さんの口から放たれた言葉が衝撃的で、甘味処だというのに大きな声を出してしまった。
「と、時透くんのことを名前呼びだなんて、できるわけがないじゃないですか…!ななな何考えてるんですか、すけべ!」
「すけべじゃねえわ!!お前派手に頭大丈夫か!?」
と、宇髄さんと言い争っていると、可愛らしい声が後ろから聞こえてきた。
「あーっ!やっぱり、Aちゃんと宇髄さんね!声が聞こえてきたから、つい来ちゃったの!
ね、伊黒さん!」
声の主が蜜璃ちゃんであると気づいた時は嬉しさで空も飛べるかと思ったが、「伊黒さん」という言葉が聞こえた瞬間、先程の高揚感は全て嘘のように消え去った。
「………嗚呼。俺は来たいとは微塵も思っていなかったが、甘露寺がどうしてもと言うから、仕方がなく来てやっただけだ。甘露寺がどうしてもと言ったからだ。甘露寺の願いは絶対だからな。お前ら2人とも、心の底から感謝しろ。」
流石伊黒さん。会話の一文一文に蜜璃ちゃんへの愛が溢れている。
「あー、あざーっす」
「巫山戯るな、宇髄。もっと気持ちを込めろ。天泣も感謝しろ。」
「ありがとうございますー。」
「…」
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美雨音トウカ - なずなさん» そんな風におっしゃって下さるだなんて、とても嬉しいです!モチベーション凄くあがります…!これからも頑張って更新しますので、是非宜しくお願い致します! (4月21日 11時) (レス) id: 212377e0a4 (このIDを非表示/違反報告)
なずな - 心臓が…爆発…しました……最&高です!!! (4月14日 16時) (レス) @page19 id: f22ade9e4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美雨音トウカ | 作成日時:2024年3月20日 0時