Glitter

▶︎ ページ5

．









阪本｢……｣

辻｢あー疲れた！どう？｣

阪本｢すごいっすね｣

辻｢うっす笑｣


でもわかる、すごいしか言われへんねんマジェマジェは、と辻さんは廊下を歩きながら言った。

マジェマジェが出てきた途端、空気がガラッと変わった。

緊迫感のある、あの程よいドキドキ。ギターをかき鳴らしてほぼ叫び声に近い歌声で歌い上げるAさんに確実に釘付けであった。

あんな人に俺は褒められていたのか。今更ながらに恥ずかしくなる。


｢ぐぉぉぉぇぇええ疲れた！無理！やめる！｣

メンバー｢また出た Aのやめるやめる詐欺｣

メンバー｢無茶苦茶なこと言うな｣

メンバー｢やめたことないくせに。ツアー回りきってる癖に｣


やめたるわ！と不機嫌そうに宣言するAさんを後ろから見た。こんな子供っぽい人だったか？と疑問に思いながら、辻さんの裾を引っ張る。


辻｢あ、はいはい……Aさーん、迎えに来ました｣

｢うわ出た 辻くんや！ギターのバケモン辻クラシックや！｣

辻｢阪本もおりますで笑｣

｢いやーっ！ボーカルの奇才！ジンジャーエール阪本くんや！やめてー｣

阪本｢何がやねん！｣


この人めちゃくちゃやん！あんなに上手かったのに！俺より全然上手いのに！おちょくられてんの！？

あー阪本くんだーとメンバーの一人の人が声をかけてくる。あ、はい、と陰キャの受け答えしか出来ない俺に、相手は笑った。


メンバー｢いやー昨日はA、えらく興奮してたよ。いつもは死んだ顔してるのに、真夜中にLINE送ってきたりして大変だったんだから｣


凄いもん見てもうたって、といそいそ帰る準備するAさんを見ながら言った。へえ、とやる気のなさそうな返事しか返すことが出来ない。


メンバー｢今日ずっと練習してて本番中声飛びそうになったり。アイツらには負けたくないって、｣


何がやねん。ツアーもできてるし、CDも出してる、度々テレビにも出てるし、地下の音楽界隈では引っ張りだこのくせに、と昨日調べた浅い知識で思う。


メンバー｢やる気に満ちてるA見るの久しぶりだからさ、なんか嬉しいわ。ありがとね、焚き付けてくれて｣


仲良くしてやってね、変人だけど、と困り笑顔で笑う。いやこちらこそ、とほんのかるーく頭を下げると、｢行くぞ｣とその横をAさんが突っ切った。











．

▶︎→←▶︎

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す