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「……、いや、なんも、なんもない、」
ごめんごめん、と慌てて立ち上がり、顔を伏せたまま、白いズボンと緑のズボンを視界に捉えながら、逃げるように非常階段のドアノブに手をかけた。
ちょ、おい、と阪本がその手を取る。やばい、と心臓がドギィと音を立てる。
阪本「なんか今日変やぞお前、なんやねん、どうしてん」
誰のせいやと思ってんねん。
極端なイラチなのが私のダメなところ。特にマユリカの事になると一気に沸点を突き抜ける。
カチンときて、一気に叫ぶ。
「……、ほっといて!!!」
押し退ける形で廊下を走った。
中谷の焦った声が聞こえたけど、あんな余裕そうな表情で「おめでとう」って言ったのに、今更こんな泣いた顔見せられへんやろ。
「嫌や、行って欲しくない」
稲田「それをマユリカにもやれ言うてんの!」
「いや!無理!!絶対行って欲しくない!、今でも間に合う、考え直して!!お願い!」
稲田「嬉しいけど複雑やわあ」
いなみきに泣きついている。言葉通り泣きついている。
秋定が言ったみたいに、別に解散するわけじゃないし、戻ってくるのに、
どうしてこんなに子供のように駄々を捏ねているのか自分でも分からない。
稲田「Aの気持ちも嬉しいけど、決まったことやねん」
「……なんで東京行くん……」
稲田「そら、33期を東京に売り出すために決まってるやん」
「細々やっていけばいいやん……」
稲田「私、悲しいわ。Aは私が売れるの嫌なん?」
「……嫌じゃない……」
稲田「やろ?」
大阪にはあんたに会うために帰ってくるから、と頬をすくい上げられた。
その顔を見ると、今までの思い出がぶわっと蘇ってきて、また涙がちょちょぎれる。
稲田「もー!!これから出番あんねやろ!?泣くのやめーな!!」
「ごめん、ごめんな、おめでとう、いなみき、」
稲田「……A……」
「いい気持ちで祝われへんくてごめん、めちゃくちゃ嬉しい、嬉しいねん……、」
やめてや、こっちまで泣けてくるやん、と震えた声でいなみきは私の頭を優しく撫でる。
その心地良さに今だけは甘えようと思った。
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流(プロフ) - 優香さん» お久しぶりです〜😭りぼんやっぱりマストなんですね……私はばっちりコロコロ読んでました 論外すぎる (2023年5月11日 1時) (レス) id: a6a9c1ba3f (このIDを非表示/違反報告)
優香(プロフ) - お久しぶりです!ちゃおとりぼんで吹き出しました笑 私はりぼんとなかよしでしたw (2023年5月9日 23時) (レス) @page36 id: aada9f26af (このIDを非表示/違反報告)
流(プロフ) - △さん» わーー良かったです〜😭ちゃんとオチとして落とせたのか不安でしたがそう言っていただけて安心しました……😢❤️この小説執筆意欲のフルエンジンかかってる時に書いたのでめちゃくちゃまとまってます笑 (2023年5月7日 10時) (レス) id: a6a9c1ba3f (このIDを非表示/違反報告)
流(プロフ) - さかよさん» コメントありがとうございます😭やっぱり東京進出悲しいくて書いちゃいました😭こちらこそこれからもよろしくお願いします🙏 (2023年5月7日 10時) (レス) @page28 id: a6a9c1ba3f (このIDを非表示/違反報告)
△ - 秋定さんと星座の話めちゃくちゃ最高でした!!!全部が全部刺さりすぎて放心してます!!!公開してくださってありがとう!!!!!! (2023年5月7日 1時) (レス) @page30 id: 733d145fde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流 | 作成日時:2023年2月22日 2時