伊之助さんが慰めてくれた日 ページ6
今日は綺麗な綺麗な満月
夜も更けて皆寝静まったこの時間に、何となく眠れなくて縁側に座る私
『 少し寒いなあ 』
まだ冬ではないけれど、少し肌寒い
ただの気温のせいなのか、それとも、それは隣に誰もいないからか
夜は静かで美しいけど、時に残酷な気持ちにさせるもの
『 あれ、』
ぽろ、と無意識に目から涙が零れ落ちる
思い出したくもない過去の事、鬼のせいで失った大切な家族の事、何だか色々忘れたかった事が一気に押し寄せる
『 ぅ、うぅぅ… 』
誰もいないから、今だけは泣かせて頂戴
止めることの出来ない涙と誰にも聞こえないような小さな嗚咽
「 …こんな時間に何してやがる 」
『 ッ!! 』
「 ア…? 」
嘘、何でこんな時に限って
起きてくるんですか、伊之助さん
まさか人が来るなんて思わなくてビクッと思いきり肩が揺れる
「 お、お前… 泣いてんのか 」
『 な、泣いてないですよ』
「 でも、」
『 目に少し、埃が入っただけですっ 』
いてて、なんて無理矢理演技
目を擦って泣いているのを悟られないように
「 オイ、隠してんじゃねぇ 」
『 っ! 』
「 泣いてんじゃねーか 」
俯いて擦っていた手をパシっと掴まれ
半ば強制的に伊之助さんの方を向く
「 何かあったのかよ 」
『 …何も
ただちょっと、嫌な事を思い出しまして 』
心配させたくなくて、深く聞かれたくなくて
でも平気ですなんて笑って誤魔化す
「 …泣くなよ 」
『 わッ 』
「 お前が泣いてると、どうすりゃいいのか分かんねェ 」
誤魔化しても止まらない涙を、不器用ながらゴシゴシっと拭いてくれる伊之助さん
『 ふ、ふふっ、痛いですよ伊之助さん 』
「 じゃその涙止めろ! 」
『 もう止まりました 』
「 …流れてんじゃねーか 」
そう言いながらまたゴシゴシと、強めの力で擦られる
痛いけど、嬉しくて
今の私の心を埋めるにはそれで十分だった
『 これは嬉し泣きです 』
「 はぁ? ウレシ泣きィ? 」
『 伊之助さんが、優しいから 』
「 っ! 」
さっきまでの辛い涙じゃない
涙を拭ってくれる伊之助さんの手をぎゅっと握る
『 ありがとう、伊之助さん 』
「 お、ッオウ 」
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しゃび(プロフ) - 羅門茶.さん» コメントありがとうございます。一気読みしていただけて嬉しいです!伊之助が大好きなのでその気持ちを爆発させて書いた小説なので個人的にも思い入れの深い作品になっています。嬉しいお言葉もありがとうございます! (2020年6月1日 22時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
羅門茶.(プロフ) - 素晴らしい作品で一気読みしてしまいました(T ^ T)この作品大好きです、、 (2020年5月23日 15時) (レス) id: efacd8ff92 (このIDを非表示/違反報告)
しゃび(プロフ) - Znさん» コメントありがとうございます。恋愛に対して不器用で可愛らしい伊之助を書きたかったのでそう言って頂けて嬉しいです...!嬉しいお言葉ばかりありがとうございます。他の作品も拙いものばかりですが少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 (2020年3月10日 10時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
Zn(プロフ) - 本当に素晴らしい作品に出会いました!!もう毎話毎話伊之助の可愛さに震えてました、、他の小説も読んで見ようと思います。 (2020年3月8日 21時) (レス) id: 5d97af5082 (このIDを非表示/違反報告)
しゃび(プロフ) - 饅頭さん» コメントありがとうございます。神だなんて勿体ないお言葉ありがとうございます...!思い出深い作品なのでそう言っていただけてとても嬉しく思います。完結してる作品ですが、暇な時にでも読み返して貰えたら幸いです! (2020年3月2日 11時) (レス) id: f924ce756f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃび | 作成日時:2020年2月7日 18時