チビデカちゃんのDOUTEI喪失日記

＊ ページ16

・









はぁ……童貞というものはこんなにも疲れるものなのか……一生童貞の方がいっそ楽なのかもしれない。俺は始めて弱気になった。

駄目だ、俺らしくもないじゃないかっ！直ぐに気を取り直し、自分に活を入れるべく頬を両手で叩いた。

周りを見渡してみれば、今日は女性客が多い。レイトショーなら空いていると思ってやってきたが、甘かったようだ。里見似の松坂梅李という俳優は余程人気があるらしい。





実は、映画を観るにあたり心配なことが一つあった。それは、俺のオレが暴走してしまうのではないかということだ。

何しろ俺は童貞だ、男女の交わりの場面は保険体育の授業でも見たことがなくよくわからない。


始めての秘境で、命綱が切れるかもしれないことが心配だった。

そこで俺は苦肉の策として、俺のオレにコン ドームを予め被せておこうと思っていた。万が一の大惨事が起きた時のことを考えると、やはりその方が安心して映画に集中できる。


俺はトイレに行くと、持ってきたコン ドームを取り出した。


いくら何でも、今、おったてていたらただの変態だ。俺はおとなしくしている俺のオレに、ブツを被せてからジッパーを上げた。もちろんゆるゆるだが想定内だ。


これでよし！


股間が何となくムズムズするが我慢するしかない。最後列の一番端に座り、ミネラルウォーターをゴクリと飲んだ。生まれて初めてのＲ指定に鼓動が大きく音を刻む。









「すみません……ちょっと通してもらってもいいですか？」


足を引くと、ぺこりとお辞儀をしてその人は俺の隣に座った。ちっ、隣に人がいるのかよ……


風が起き、ふわりと香る良い匂い。


ん？


この匂い……どこかで嗅いだことがある？そうだ！コン ドームを買ったあの日だ！


ま、まさかっ！


顔を上げ隣を見ると、隣の男も俺のことを見ている。げっ！！ＭＥＧＡピタあさみんじゃねーか！




「メガみん！」

「あっ、ミニマム！」



思わず同時に声が出た。


や、ヤバい、メガみんて言ってしまった！だが……ミニマムだと？あさみんも、俺にバレてばつの悪そうな顔をしている。





「俺はＭだ」



我慢できず、思わずドヤり気味に言っていた。


「Ｓ買おうとしてませんでした？」



可笑しそうにくすりと笑うあさみん。


「……っ！あっ、あれは色々とあったんだ！いっ、いいじゃないか！おまえには関係ないだろっ！」

「ふふ、まあそうですね」



その余裕な顔がムカつくわ〜。








・

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す