チビデカちゃんのDOUTEI喪失日記

＊ ページ2

・









記念すべき一日目の日記には、俺の決意と、自分への励ましを書いておこう。





―――――――――――――――
○月△日 晴れ

昨日で俺も三十歳になった。それと同時に、焦りが顕著になってきた。早く童貞を捨てないと、本当に恥ずかしい大人になってしまう。タイムリミットはもうすぐそこだ！

俺は、必ず童貞を卒業してみせる！

頑張れ俺と、俺のオレ。


にょほほ〜

―――――――――――――――




早起きして日記をつけ、自室の鍵付きの机の引き出しに大切にしまった。鍵は絶対に見つかってはいけないから、毎日首から下げて持ち歩くことにしよう。

俺は、チェーンに鍵を通して首から下げた。

うん。これでよしっ！




でもやっぱり落ち着かない。ふと、心配事が頭を過った。

もし俺が殉職するようなことが起きたら、この日記が家族にバレてしまう。

それだけは避けなければならない……

童貞だってバレる上に、こんなヤル気満々の日記をつけていたことが知られたら……
考えただけでもぞっとする。

俺は絶対に死ぬわけにはいかないんだ！








その日の朝、俺が出勤すると、署の皆が俺の事を童貞だと知っていそうな不安に駆られる。
なんだ、この焦燥感は……

そんな事があるわけないというのに、頭の中が童貞のことでいっぱいになっている自分。

つぅーっと、背中に嫌な汗が流れた。





この日俺は、射撃の訓練があり、同じく訓練に来ていた本庁の機動捜査隊である里見と、射撃場でばったりと会った。

里見とはライバルであり、どっちが本庁の捜査一課に先に行けるか争っている仲だ。嫌な奴に会ってしまい、気分が悪くなる。

すると、休み時間に里見が話しかけてきた。



「こんにちは、速水さん」

「あぁ……」



いつ見てもイケメンで本当にムカつくヤツだ。
どうせ童貞じゃないんだろ？



「速水さんてサッカーやってたから、やっぱり動体視力って良いんですよね？」

「えっ！？どっ、どっ、童貞扱く？」



里見はきょとんとして俺を見た。



「速水さん、どうかしました？動体視力の話ですよ。射撃の話ですけど？」

「どっ、どっ、童貞扱くと、しゃっ、射 精の話っ！？」

「動体視力が良いと、射撃も上手だって話しです」

「あ……」




”どうたいしりょく”の事か……

ヤバいな……”どうていしごく”って聞こえたじゃねーか！




たらりと、また嫌な汗が背中を伝った。









・

＊→←Diary１

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す