42 ページ42
「早くとれよ。」
画面を見るとそこには大倉さんの名前。迷いながら、指が勝手に電話をつなぐ。
「あ、丸山さん？ちょっと営業のことで相談が…」
「お…くらさ…」
「…丸山さん、どうした？」
心配そうな声に涙がこぼれそうになる。
「助けて…」
ふり絞って出した声に大倉さんが答えてくれる。
「今どこ！？」
「おい、隆平、何を…」
「助けて…ほし…」
「どこにおるか言って！！」
「会社の…前の…交差点で…ｱｯ…」
「お前、なんやねん、その言い方！貸せ！」
スマホを取り上げられて切られる。力が出ない。情けない。何をしてんねんやろ、僕は。
「話、したいだけやんけ。ほら、行くぞ。」
そのまま連れて行かれる。周りの人になんて思われてるんやろ…。いや…誰も僕に興味なんか…昔からそうやんか…
「ここやったらええやろ。」
人通りの少ない公園。会社近くの憩いの場所が今は暗闇の中。
「隆平、なんで何も言わへんねん。俺、今でもお前のこと…」
気持ちの悪い言葉が聞こえてくる。聞きたくない。僕のこと、罵って捨てたくせに。
「聞いてんのか？なあ！」
「痛っ！」
「なんで何も言わんねん。隆平！」
きつく両腕を掴まれて激しく揺すられる。
「はぁ。まあ、ええわ。お前…相変わらず…」
動きが急に止まったと思ったら、今度はそのままゆっくりと引き寄せられる。嫌だ。嫌！なんで動かへんの！動け！動けって！
「丸山さん！」
思いきり引っ張られて、目の前の人から引き離される。
「ﾊｧﾊｧ…あんた誰？何してんの？」
「な、はあ？お前こそ誰やねん。」
「ﾊｧ…わたしは丸山の同僚です。何か不手際があったのなら本社へどうぞ。お話を伺います。」
「プライベートのことや。会社とは関係ない。」
「ではすみませんが、まだ丸山は仕事が残っておりますので、連れ帰ります。用事があるならその後で。しつこいようなら警察に来てもらいます。」
「…ﾁｯ…別に用はない。昔の知り合いってだけや。ちょっと話そうと思ってやな。まあ、ええわ。」
そのままそれ以上何も言わず去っていく足音。
「丸山さん？」
そっと肩に手がふれる。優しい。なんでこんなに優しいんやろう。
「すみません…来てもらって…もうしわけないです…」
「なんで？俺、丸山さんの友だちやろ？当たり前やんか。」
「こんなとこ、見てほしくない…」
「じゃあ、目ぇ閉じとくわ。」
「ｳｯ…今は…何も聞かんといてほし…」
「ん。黙っとく。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：orange | 作成日時：2022年12月27日 14時
