五話 ページ7
その後は、また気づくと馬車の中で仰向けになって寝ていた。頭には大きいひんやりと湿ったタオル。勢いよく起き上がると目の前にはこちらに目を見開いていた状態で替えのタオルを両手に持っていた男がいた。
「ああ、起きたんか。よかった」
「え、俺なんでここに…」
「あれ?覚えてないのか?兄ちゃんはここから近くの森で倒れてたんだよ。それを俺が拾ったってわけ、感謝しとけー」
「あ、ありがとうございます」
どこか変な圧を含めてこちらを見つめる男に、感謝を告げると、男は白い歯を見せて豪快に笑った後、
「まぁ、今から街に戻ろうと思ったから、良くなるまでは寝てていいぞ」
と気前よく言ってくれた。聞けば、森が燃えているという情報を聞きつけたらしく、着いたころには炎は完全に消えていて俺が倒れていた辺りはほとんど完全に焼けてすぐ奥まで進むと、新緑が広がっている不自然な燃え方をしていたのだという。
ガタン。
俺を拾ってくれたおじさんの馬車に乗りながら、ぼー、と窓の外を見る。その様子を操縦席からどこか不安げに見つめるおじさんは気を利かせてか、話かけてくれた。
「よかったなぁ、兄ちゃん。あの森は特別な魔法がかかっていて余程の火力がない限り燃えねぇんだわ。その木があんなになるまで燃えているのに、火傷も傷一つないのは奇跡だよ」
「………そうですか」
あの植物達の存在は、いまだにわかっていない。窓の外は未だに建築物が立ち並んでいる気配はない。馬車の中は薄暗いので、ここにいると鬱蒼とした森に迷い込んでしまったような心地になってしまい。首がすくんでしまう。
少なからずこのおじさんは俺よりこの世界で生きているし、もしかしたら何か情報がつかめるかもしれない。Aは思い切って彼に尋ねようと決めた。
「なぁ……おじさん。変なこと聞くかもしれねぇんだけど、ここってもしかして魔法とか使える世界なのか?俺が倒れていたところに壊れた馬車はなかったか?」
すると、おじさんは俺の方少し驚いたように見た。あえて植物のことを聞かなかったのはこの能力は大手に振って公表したくないからだ。もしかしたら、公表したら人体実験とか危ない所から誘拐とかがあり得そうだからだ、これはあくまでも推測だが。
考えるや否や、おじさんが口を開いた。
「まずこの世界じゃ魔法を使える奴は大体、魔法士を目指してナイトレイブンカレッジっていう魔法士養成学校にかようんだ」
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時