四話 ページ6
その瞬間。
ぽん。
目の前であの植物の騎士たちの身体から白く赤い斑点が付いた大量の花が咲いた。
おいおい、こんな時に花かよ、と思うのも束の間、息が止まる。
偶然にも前世、小学校の頃、昆虫や植物が何故か大好きだった俺は図書館に籠っては植物図鑑などを読み漁っていたほどだ。小学校を卒業してからはほとんどその見た内容は忘れていたのだが、どうしてこの時に限って思い出してしまったのだろう。
その花はゴジアオイという花だ。
通称名『自滅する花』気温がある一定の部分まで超えると、発火しやすい分泌液を出して自然発火する花。
花言葉は、『わたしは明日、死ぬだろう』
すべてを悟り逃げようと足を動かした瞬間、嫌な音が耳を木霊する。何かが燃える嫌な匂い。ぐるんと視線を回し、騎士の方を見る。身体じゅうに大量のゴジアオイを咲かせた騎士は外見も分からないほどの炎に包まれ。焼けていく。
「こいつッ……!役に立てって言ったら自滅しやがった!!」
急いで服を脱ぎ、炎を消すようにバサバサと空気を送るが、炎は不自然にその服を避けながら近くの森の木に乗り移った。乗り移られた木はみるみるうちに燃え盛り一気に真っ黒になった。
「このままじゃ……山火事だぞ…」
なんとか寒さはやわらげたが、少し暖かければいいものを、山を燃やしてまで自分を暖かくしようとする植物達の善意に戸惑いながらも、なんとかこれは止めなければと精一杯喉から声を引き出す。
その間にも、次々に炎は燃え盛り山を焼野原にするのをどうやって止めればいいのか、と鈍りながら、安心させるような歌を頭の中で絞り出す。
燃え盛る炎を前に男は口を開いた。
あやす様に。安心させるように。
とん、とん、とんと、指先でリズムを取りながら、ゆっくりと歌う。
__ねんねん ころりよ おころりよ
__坊やは 良い子じゃ ねんねしな
お願いだから落ち着いてくれ、と言うようにただ歌う。
すると、炎の力は大分収まり、次の木を燃やすことなく俺の近くの燃えてもう使い物にならない木に移りかわり、じっと湿った視線を投げかけえてくる。
じわじわと俺の周りを小さな炎が取り囲む。必死に声をだそうと懸命に歌い続けると終わりに近づくころには、山火事にもなりかけた炎は忽然と姿を消した。
一気にどっと疲れが来る。
明らかに燃えつきた木に火の粉があるはずもなく、俺は異様なほど汗をかいていた。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時