二十七話 ページ29
ほう…、と興味深げに俺を見つめてくるアズールにふと違和感を覚え、その距離を詰める。
「おい。これはどうなってんだ。アズールさん」
ずんずんと距離を詰め、目の前まで来るとアズールはめんどくさそうに言い張った。
「ちょっと、君がこの格好だと誤解されるじゃないですか。部屋に入れてください。話はそれから」
アズールが部屋を入ってくると同時に、冷たい風が部屋に吹き入り、ぞわっと背筋がふるえる。それを見てか「どうぞ」とジェイドが毛布を手渡してきた。軽く会釈すると、「結論から言ってしまうと」とアズールの声が聞こえた。
「君には、スカラビラ寮の偵察に行ってもらいます。ちなみに拒否権はありません」
は?と言う暇も与えずアズールが言葉を続ける。
「今回、スカラビラがホリデー期間に入ります。後々情報は伝えますが、寮長のカリムさんがですね盛大なパーティを開くということで僕らも招待されました。その時にパーティを盛り上げる踊り子も一緒に招待されるらしくてですね。君のスタンプ回収もかねて、潜入して貰うことにしました」
その会話を聞いた瞬間、ぐるりと視線をエペルに俺は向ける。びくっと肩を震わせたエペルに話の合点がいった。なるほど、こいつの手伝うよ、はこのことだったのか……。そう思ったあたりで視線をアズールに戻す。
「拒否権はねぇなら、お前らに協力するのみだ」
「ご理解が早くていいですね。助かります」
「ちなみに、なんで潜入する必要がある?誰かが悪さしてんのか?」
「ええ、あくまでも僕の意見ですが副寮長のジャミルさんがですね。クーデターを起こそうとしているのかな、と」
ニコッと営業スマイルで腕を組むアズールに内心、おえっと悪態を吐くが感づかれたのか、はぁとため息を零しながら説明を続ける。
「多分彼、頭が良いと思うので、僕らの前では絶対にボロは出しません。だから君だ。踊り子である第三者の君ならば彼の警戒は薄い。彼の秘密暴いてください」
率直に、淡々と言葉を述べていくアズールに取って付けたようなわざとらしさはなく、ふぅん、とAは唸る。
「どうです?乘りますか?これは僕が持ち掛けた船です。絶対に沈みやしませんよ。まぁ、拒否権はないですけど」
「結局協力しなきゃいけないじゃねぇか…」
そこで、あっと思い出したようにフロイドは声を上げる。
「え…A。お前裏声出せるぅ?」
へ?と同時に重なる声がした。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時