十四話 ページ16
Aはばつが悪そうにぐるっと首を回すと。少し離れたところから俺のことをじっと見続けるその子に、Aは大股で近づいてく。
「お前、俺に何か言いたいことあんの？」
その子の背丈に合わせて少し体を屈ませてる。突然声をかけられたその子は、軽くのけぞりながら小さな声で言った。
「いや、その……、さっき歌ってた子守歌…。すごくきれいな声でそれに魔法も…それで…」
やはり、魔法を使ったことはバレていたらしい。どこか恥ずかしそうにはにかんで自分のことを「僕」と言ったその子は、中性的な顔立ちの男だった。
「お前男だったのか……」
まじまじと距離を詰めて顔を見ると、やっぱり女の子にしか見えない。髪の毛が少し長いのもそういうファッションなのか、と思考にふけってると、ほんのわずかに廊下のほうから男達の話し声が聞こえてくる。
まずい、ここは関係者以外立ち入り禁止区域だ。ひとまず身を隠せる場所をと、俺は目の前の彼の手首を掴んで足早にその場から去る。
「取り合えず…、話聞くから」
そう言って、彼の手を掴んで、どこが身を隠せるか、と聞きながら走る。後ろから軽い息切れが聞こえると速度を落としてその場から離れた。
＊
ノックをして数秒経ってからドアを開ける。簡素な部屋の中には使い古された楽器やマイク、大きなピアノが物置として置かれている音楽室についた。
は…は…、と軽く息切れをしながら音を立てないように注意してドアを閉める。彼と軽く逃げるために走ったのだが階段を何回か昇って廊下をずっと進んだあと、曲がり角を一回、誰も来なく俺と彼の靴の音しか響かないこの空間にたどり着いたのだ。
部屋に入ると同時に手を離したので、体力的に限界だったのかその子が疲れたように状態を起こした。その顔にはほとんど表情というものが浮かんでいない。
「ごめんな、体調はどうだ？無理をさせてすまん」
「はい……、大丈夫です……」
彼はほとんど唇を動かすことは無く、蚊の鳴くような声で答える。そう言えば、名前を聞いてないなと俺は彼に尋ねるすると、「エぺル……」と小さな声が聞こえた。
「飯、あまり食べてねえのか？」
「…え？」
「だから、エペルほっせーから飯ちゃんと食ってんのかなって。俺たち男子高校生だろ食べ盛りじゃん」
「えっと、ヴィルさんから食事制限というか……バランスのいい食事を、かな？」
その瞬間、びくっとAが反応する。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
