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聞き役 ページ3

Daigo side.


·


自分でも、一体何が言いたいのかわからない。


Aさんに思いを伝える勇気なんてないので、
この話の着地点の見当がつかない。


ただ、今日くるまくんと喋って、途端に焦りが出たのは事実だ。

僕以外にAさんを特別に思っている人の存在を、
ちゃんと確認したのははじめてだった。



わかってはいた。

Aさんは素敵な人だから。


Aさんを好きになる男なんてたくさんいる って、
わかってはいたけれど。


いざとなると、戸惑ってしまうものだった。




『…Aさんは、恋人とか欲しいの?』


「なんですか急に笑 まぁ、欲しくないわけではないです」


『そっか』


「永見さんは?っていうか、永見さんって今彼女さんいらっしゃいます?」


『いや、おらんよ』


「へー、そうなんですね」


『いなさそうやろ?』


「いや、そんなことないですよ」



そう言うと、Aさんは自分の鼻筋を指でなぞった。



「永見さん、優しいし、お顔も綺麗ですし。私、永見さんの鼻 大好きなんですよね」


『…鼻?』


「鼻。」



そうやって笑っているAさんが、何より愛おしかった。



『…僕は、』



Aさんを眺めて、お気に入りの部分を探す。


気だるい瞳、通った鼻筋、発色の良い可愛らしい唇。

白い肌、艶のある髪、しなやかな手。


どれも綺麗で、どれもAさんを形作る大切な一部で。

お気に入りを決めるなんて、無茶だった。



『Aさんも、すごく、素敵やと思うよ』



Aさんの良さを一言で言い表すなんて、とても無理だけれど。


言葉足らずでも、これくらいは素直に伝えようと思った。




「えー、そうですかね?笑」


『自分に自信もって』



だって、あなたを特別に思っている人が、ここにいる。



「あんまり言うたら調子乗ってまいますよ笑」


『乗ったらいいやん、自慢も全部聞いてあげるし』



Aさんの話なら、ずっと聞いていたい。



「やっぱり、優しいですね。永見さん」



永見さん。





『うん、僕 優しいねん』




Aさんにだけは、ね。



·

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作者名: | 作成日時:2022年1月26日 11時

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