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静かに ページ2

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くるまくんに駅まで送ってもらい、
永見さんと一緒に新幹線に乗り込む。

“自由席”と書かれたチケットを手に。


永「今日 すいてるね」

『そうですね』


空いていた席に、適当に腰掛けた。

私は窓側、永見さんはその隣。


サラリーマン達の寝息に包まれた車内で、窓の外を眺める。


永「ねぇ」

『はい』


窓の外を見ているふりをして、
それに反射する永見さんの横顔を見た。


永「くるまくんと、仲良いの?」

『はい、仲良くしてもらってます』

永「んー、そっか」

『何ですか?』

永「いや、なんもない」

『ん』


静けさが漂う空気の中、ちいさな声で言葉を紡ぐ。


『東京で仕事のときはいつも二人でご飯食べに行ってます』

永「…へぇ」


永見さんの目が、一瞬私の方を向く。


永「……僕ともさ、仲良くしてね」

『十分仲良いやないですか笑』

永「うん、そうやけど」


だんだんと、窓から見える灯りが少なくなっていく。
もう東京を出たのだろうか。



永「なんか、Aさんが僕以外の人と仲良くしてるのをちゃんと見るの、久しぶりやったから」


『はは、何ですか、嫉妬?笑』


永「ふふ、どうやろ笑」


一度 窓から目を離し、少し俯いている永見さんを見た。



永「なんか、もっと、Aさんと一緒にいたいなって思っただけ」


『何それ笑』


永「んー、ごめん。なんか僕、今日 変かも笑」


思えば、私の手首を掴んだときから、
今日の永見さんの奇行は始まっていたのかもしれない。


『まぁ、人生いろいろありますし。疲れもあるんちゃいます?』

永「どうかな、笑」


最近、夜遅くまで残って楽屋でネタを作っているのを、知っている。

基本 面倒臭がりなのにお笑いに対してはストイックで。
私は、そんな永見さんのことを尊敬しているのだ。



永「ただ単に、ちょっと焦っちゃったんかも」


『焦る?まぁR-1も近いですしね』


永「そうじゃなくて、」



永見さんの目が、真っ直ぐに私を捉えた。



永「Aさんが、どっか行っちゃう前に」



『…え?笑』




永「なんか、気づいたときにはもう追いつけへんくらい遠いところにおりそうで」


『ちょっと、よくわからないですけど』


永「そうやんな、ごめん」



少しの沈黙。

何しろ明るい車内だから、永見さんの表情もよく見える。


何だか見たことがないような、歪んだ、悲しそうな顔だった。


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作者名: | 作成日時:2022年1月26日 11時

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