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「大丈夫、捕って食いやしないから」
ちょこんと座った私の頬に、そっと添えられた手は冷たくて火照ったままの私にちょうど良かった。
ドキドキ、ドキドキ。
「あの、ね、佐久間さま?」
「なあに?」
「今はまだ嫌ですけど、鬼退治が終われば私を佐久間さまの好きなようにしてください」
見開かれる双眸。
これはいつか伝えようと思っていたこと。
「私の願いはお父さんお母さんに恩返しをする事です。その願いを叶える機会を与えてくれた佐久間さまなら、願いを叶えた後なら食べられても構わない」
本気でそう思うのは、亮平さんが言っていたような鬼の惑わしのせいなのか。
分からないけど、少なくともこの胸の中に宿った気持ちは偽物じゃないと思いたいなって。
「…………」
「さく……っ、」
言葉をくれない佐久間さんに再度問いかけようとしたら、ばふんと布団の上に押し倒される。
そして待ったなしに唇に感じる熱くて柔らかい感触に、ドキンと更に心臓が跳ねた。
「っ、…さ、…ま、」
息が出来ずにいると、僅かに隙間を作ってくれる。
それも束の間で、次にはねっとりとした舌が私の口内を忙しなく舐め回す。
「あっ…」
「A、」
ようやく離れてくれた私たちの間に伸びる銀の糸。
艶めかしくて、ペロリと唇を舐めてしまった。
「これは誓いだよ。いつかこの体は佐久間が美味しくいただくからね?」
「…さ、くま、さまあ」
「にひひ、かあいいね。恥ずかしいくせに、何も知らないくせに、そうやって無意識に男を誘うなんて、やっぱりAは桃姫だよ」
「?」
よく分からないまま、ただ佐久間さまだけを見上げる。
誓いと言いながら、長く鋭い爪は私の首筋から徐々に下に下りていった。
そしてササッと胸元を広げられて、にっと口角を上げた佐久間さまの笑みが見えなくなってしまう。
代わりに目の前にあるのはふわふわの頭だ。
チクッと突然走った僅かな痛みに声にならない声をあげた。
「っ、?」
「佐久間のものって印だよ。これが消えないうちは大丈夫。お前は全てのものから守られるよ」
身を起こした佐久間さまは、そのまま隣にパタリと横たわる。
私は痛みのわけを知りたくて、行灯の灯りを頼りに胸と胸の間を見てみた。
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ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間推し - お話が面白くて一気に読み進めてしまいました〜!!続きも楽しみです! (2020年11月21日 8時) (レス) id: b5372a6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» ありがとうございます!!お話書かれてるんですね!?よし見に行かねば!! いえいえ彼への愛があれば素晴らしい作品のはずです!一緒に楽しんで書きましょうね(^^) (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» 鬼佐久間さんに是非惚れてください(笑)食べられて良いなんて言っちゃったら、今夜辺りに来ますよ?(笑)まだドキドキシーンがあると思いますが楽しんでほしいです!ありがとうございました! (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年10月24日 1時