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もうついでだしってことで、私たちもここで少年と団子を食べる事にした。
「君名前は?」
亮平さんが聞けば、少年はゴクリと団子を飲み込んで「皆は猿吉って言う」とポツリ。
動きが素早く、木登りが得意なんだって。
「なるほど。やから盗人業なんてやってるんやな」
「…ごめんなさい」
先程までの威勢の良さはなくなり、すっかり大人しくなってる。
よくよく話を聞くと、この辺りを寝床にして盗みを働いたり、自分たちのような孤児の世話をしてくれる大人の世話になりながら毎日ギリギリの暮らしをしていたらしい。
「へえ、つまりさ最近ここいらで襲われる事が多いのは猿吉たちのせいだったの?」
亮平さんが鋭い目付きで尋ねると、申し訳なさげに俯いてしまった。
着物を握り締める手が痛々しい。
「中には俺の仲間も居ると思う。でも何かを持って帰らなきゃ俺たち怒られちゃうから…」
「誰にや?」
「上里様。俺たちの面倒を見てくれてる人」
「詳しく聞かせてもらえるかな?」
「うん。俺たちはそれぞれ仕事を与えられるんだけど、女子は家事。男子は俺みたいに盗みや労働に振り分けられるんだ」
私たちは猿吉の話を聞いて溜息を吐いた。
きっと彼らは身売りされたのだろう。
自分達が食うことすらできない貧しい家庭の親が我が子を売る。
その売られた子供たちの末路なんて、とてもじゃないけど幸せなものだとは思えない。
「ねえ、君の本当の名前は?」
捨てられた時に、彼は新しい名前を与えられたはずだ。
だってこの子、
「俺の本当の名前は、らうる…」
異国の血が混ざってると直ぐに気が付いたから。
「らうる、か。いい名前だね」
らうるの母は異国の者と恋に落ちたはいいが、異国の血はどうしても煙たがれ、職を与えてもらえなく貧しい暮らしを余儀なくされた。
二人は愛し合ってらうるを授かり産んだが、そんな暮らしでは自分達が生きて行くのもやっと。
そして、自分達が生きるために子供を売るしかなかった。
「母ちゃんが、ごめんねって泣きながらこれを渡してくれたんだ」
胸元から一つのお守を取り出した。
もうだいぶん薄汚れてるけど、らうるにとっては何よりも大切な物なんだろう。
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ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間推し - お話が面白くて一気に読み進めてしまいました〜!!続きも楽しみです! (2020年11月21日 8時) (レス) id: b5372a6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» ありがとうございます!!お話書かれてるんですね!?よし見に行かねば!! いえいえ彼への愛があれば素晴らしい作品のはずです!一緒に楽しんで書きましょうね(^^) (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» 鬼佐久間さんに是非惚れてください(笑)食べられて良いなんて言っちゃったら、今夜辺りに来ますよ?(笑)まだドキドキシーンがあると思いますが楽しんでほしいです!ありがとうございました! (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年10月24日 1時