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「桃姫の美しさは兼ねてより耳に入っておりまして、この目で是非そのお姿を見たいと我が殿が仰られております」
そうなのです。噂が噂を運び、Aの美しさを一目見ようと連日男達が家にやってくるものだから、その張本人はウンザリ気味なのです。
で、その顔を見たいと仰られてる殿様は何処に?と、首を傾げると宮舘はとんでもない申し出をしてくるのでした。
「殿はとても面倒くさ……ごほんっ! 殿はとてもお忙しい故、こちらまで出向くことは出来ません。なのでどうか桃姫よ、我が殿の城へ来て頂けぬか?」
「え、嫌です」
「………頼みます!」
「嫌です」
桃姫は頑なに首を縦に振りません。
しかし宮舘としても、はいそうですかとおめおめ帰るわけにも行かぬのです。ですから、隣で静かに様子を伺っていた老夫婦に視線を送り、というか睨んで加勢しろと威圧しています。
「……Aや、良いんじゃないかい。たまには人助けなど忘れて、立派なお城を見学させていただきなさい」
「え、でも、」
「そうですよ、お城になんて一生入る機会ないかもしれないよ」
「んー、確かに」
「では、来ていただけると?」
Aは、もう一度老夫婦を見て二人が何度も頷くものだから行ってみようかと気持ちが揺らぐ。
そうだ、永遠の別れではない。
ちょっと遊びに行くだけ、この時Aはそう信じて疑わなかったのである。
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そして翌朝、桃姫Aと使いの者 宮舘は遠く離れた城へ向かうべく朝早く村を出ることにした。
「桃姫よ、どうぞお手を」
見事に綺麗な白馬に跨り宮舘はAに手を差し伸べる。
Aは見送りに出てくれた夫婦を振り返る。
「お父さん、お母さん、暫く留守にするけど体調には気をつけてね?」
「ああ、Aもな」
「………」
「お母さん?」
何故か悲しそうなお婆さん。お爺さんがお婆さんの肩をポンポンと軽く叩くと、ハッとしたように笑顔を浮かべてAの手を握った。
「Aこそ、体に気をつけてね」
「うん!」
「A、」
何かを言いかけてお爺さんに制されたお婆さんはヒラヒラと力なく手を振りAを見送ります。
宮舘はそんな二人に小さく会釈をし、Aは見えなくなるまで手を振りました。
「これで良い。これがあの子の幸せのため」
「はい」
夫婦は抱き合って、桃姫への想いを募らせたのであった。
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ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ(プロフ) - 佐久間推しさん» コメントありがとうございます!一気に読んでもらえて光栄です。続きもそろそろ終盤ですのでどうぞ楽しんでください(^^) (2020年11月22日 23時) (レス) id: 0a7632b1c0 (このIDを非表示/違反報告)
佐久間推し - お話が面白くて一気に読み進めてしまいました〜!!続きも楽しみです! (2020年11月21日 8時) (レス) id: b5372a6ba4 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» ありがとうございます!!お話書かれてるんですね!?よし見に行かねば!! いえいえ彼への愛があれば素晴らしい作品のはずです!一緒に楽しんで書きましょうね(^^) (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
☆ゆきんこ☆(プロフ) - しーさん» 鬼佐久間さんに是非惚れてください(笑)食べられて良いなんて言っちゃったら、今夜辺りに来ますよ?(笑)まだドキドキシーンがあると思いますが楽しんでほしいです!ありがとうございました! (2020年11月4日 9時) (レス) id: d7a99168d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきんこ | 作成日時:2020年10月24日 1時