【あんスタ】ハーバリウム《２》 (ページ25)

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73.深海奏汰ページ25

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「あなたは＂ひどいひと＂ですね」

『この世に酷くない人間がいるとでも？』

事の始まりなんて、本当に些細なことだ。

相変わらず噴水で制服のまま水浴びをする深海奏汰にタオルと彼の教室に寄ってジャージを手に持って行けば案の定ずぶ濡れのまま教室に行こうとしていたらしい。ギリギリセーフである。

取り敢えず深海奏汰の髪をタオルで拭いていると、忘れかけていたことを彼は口に出した。

「＂なぞ＂は解けましたか？」

謎と言われてもヒント１つない謎。ナゾナゾでもない謎。僕は首を横に振れば冒頭の言葉を言われ現在に至る。

「あなたのことですから、ちまなこになりながらあめのなか、あらしのなかをかけまわっているのかとおもいました」

『僕はじっちゃんに名にかける名探偵でも黒ずくめの組織に変な薬を飲まされた名探偵でもないですからね』

「そのまま＂めいたんてい＂とやらになっちゃえばいいですよ」

『興味ないんで』

深海奏汰にタオルを渡してジャージも渡そうとすれば何故か一向に受け取らない。

『……どうしました？』

「ぼくはどうしてもあなたに＂なぞ＂をちまなこになってでもといてほしいんですけどね～」

『そんなに僕に知ってほしいことなんですか？』

「はい。ぼくだけの＂おもいで＂にはしたくありませんから」

『でも……』

「おもいだせないあなたはほんとうに＂ひどい＂ですね」

……僕が何をしたって言うんだ

全然思い出せないし全然理解出来ない。記憶を辿れば辿る程、僕の脳は混乱し思考がぐちゃぐちゃにになる。

『……この世に酷くない人なんていませんよ。善人な人程、酷い人なんです。優しい人も、神を信じる人も、正義を貫く人も、自分を信じた人ですら、時に裏切り、酷い人になるんだ』

「おもいだしてくれないのならぼくはうみにとびこんで＂あわ＂になってきえます」

この人の場合、本当にあり得そうで僕は少し焦る。

「これでほんとうにぼくの＂そつぎょう＂までまにあうのか＂しんぱい＂ですね～」

『タイムリミットがあるなんて初耳っすよ』

「あったほうがAさん＂やるき＂がでるとおもったので」

彼も存外意地悪だ。やはり奇人は意味がわからん。

「なら＂ひんと＂をあげましょうか？」

『ヒント？』

「わかりやすくてわかりにくい＂ひんと＂です」

『それってヒントじゃないんじゃ……』

「この＂ひんと＂で、たくさんなやんで、それからたくさんあがきまくってくださいね」

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