72.朱桜司 ページ24
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『(そろそろ進化させるか)』
廊下で壁に寄りかかりながら好きなキャラの進化に必要な進化素材を集めるため周回をある程度集めた僕はタップしようとしたまさにその時だった。
「そんなに熱心にスマホを見てどうなされました？どなたか大切な方からのmailですか？」
『それは違うよ……って、朱桜くんじゃないか』
「はい」
すると突然跪いて僕の手をとる朱桜司の謎の行動にスマホを落としそうになってしまう。
「お姉さまの騎士、朱桜司です」
『君はいつから僕の騎士になったんだ』
「それはお姉さまのことをお慕いしているからで」
『待て待て待て待て』
僕の手の甲にキスをしようとする朱桜司を止めさせて無理矢理立たせると何故かムッとした表情をする彼に僕は理解出来ないでいたのだ。
やはり彼も思春期男子。思春期は難しい。
「お姉さま、私はお姉さまに忠誠を誓いたく」
『他をあたってくれ』
「お姉さま以外に誰を守れと……！」
『……アレ』
僕が指差したのは通りすがりの姫宮桃李だった。
彼にはもうスパルタ執事がいるが騎士はいないだろうからうってつけだと思い朱桜司の方を見ると心底嫌そうな顔をしていた。アイドルがそんな顔してはダメだろ。
「正気の沙汰ですか、お姉さま……」
『そんなに嫌か』
「お姉さま以外嫌ですっ」
『騎士が駄々を捏ねるな』
「騎士である私だって駄々を捏ねます」
『都合のいい騎士だな』
チェスで一戦を交え、戦いの末、朱桜司が勝ち取ったものは僕を姉にするという彼以外誰も得しないものだった。彼が勝ったのだから彼が得して当たり前なのだが、こればかりは理解し難いものがあった。
『君は何故そんなにも僕に構う』
「……それはお姉さまだからですよ」
『？』
「貴女が凄く優しくて、凄くcoolで、凄く尊敬出来る先輩だと思えたので私は貴女を尊敬し、忠誠を誓い、貴女の傍にいたいと思ったのです」
『凄く尊敬出来る先輩って……他にもいるだろ』
「たしかにいます。天祥院のお兄さまも鳴上先輩も凛月先輩も瀬名先輩も蓮巳先輩も伏見先輩も大変ご立派な方だと思われますが私は貴女がいい」
……なんて我儘な騎士なんだろう
僕はそう思えてならなかった。
「人との交流には何かの繋がりが必要でございましょう？私と強い繋がりを持ちましょうお姉さま。誰よりも強く硬い純粋という名の関係で繋がりましょうよ」
……あの時やはり勝てば良かった
僕はそう後悔した
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
