70.遊木真 ページ22
.
『ドッペルゲンガーって怖いよな』
「い、いきなりだね……」
『だって会った瞬間本物は死ぬんだよ？足掻くことも出来ず理不尽に意味不明な化け物に殺される、それって凄く無慈悲な死に方だと思わないかい？』
何故か遊木真に一緒に帰ろうと誘われ夕暮れに照らされた帰路を歩いていると、ふと図書室で見た��怖い化け物集��というものを読んだことを思い出しドッペルゲンガーのことを遊木真に教える。
遊木真は「花野ちゃんって哲学的なことを話すんだね」と苦笑いで相槌を打つ。
『でも僕らは自然とドッペルゲンガーを殺していると思うんだ』
「え……」
『自分の影だよ。影は自分の分身だ。でも自分は一人だけで充分なのだから分身なんていらない。だから影を踏む』
「あ、だから影踏みっていう遊びが出来たのかな」
『いやそれは知らん』
「知らないんかい！」
影踏みなんて多分暇を持て余した人々の遊びだと僕は思う。
遊木真のツッコミを受けたことだし今の僕はボケは渾身だったと思われる。満足だ。
「じゃあ僕がもし２人いたらどうする？」
『知らん』
「まさかの放置！？」
『瀬名先輩にでもなんとかしてもらえ』
「よりにもよって嫌なチョイス！」
『でもそうだな……もし遊木くんが僕だけに助けを求めたら策を考えてやらんでもない』
遊木真はきっと周りの奴らに助けを求めるだろう。そうなれば収拾がつかなくなってしまうから助けを求めるなら一人に絞ってほしい、と思いながら言った言葉なのだが何故か遊木真は目を張っている。
……なにか変な方向に解釈している気配を察知
「花野ちゃんに頼っていいの……？」
『いや、僕じゃなくてもいいけど』
「た、頼りたい！頼らせてください！」
『(彼もグイグイくるな……)」
何故そうなにも興奮気味なのか理解し難いが頼ってもらうのは嬉しいため否定し難い。
「えへへ、よかった……」
『？』
「花野ちゃん、なんだか僕達から少し距離を置いている感じだったからこれ以上は仲良くなれないのかなって思ってたんだけど頼らせてくれるならもっと仲良く出来るね」
『……君って無邪気だな』
距離は置いていた。けれどやめた。
距離を置いても彼らはその距離を埋めて僕が逃げないように囲んでいるから距離なんて置けないし、もうなんだか面倒臭くなってしまった。
だから、その距離を僕も埋めよう
そう思った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 100人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
