60.七種茨 ページ12
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「お久し振りですAさん！今日も今日とて可愛らしいですね！そういえばまた一段と綺麗になられましたか？Aさんも成長なされているということですね大人の魅力というものが溢れ出ていますよ！」
『……５０点』
「相変わらず手厳しいですね」
『そもそも大人の魅力ってなんだよ。僕はまだ大人になりたくないんだよ』
「そこは大人になりましょうよ」
七種茨。一番厄介な同級生かもしれない。
乱凪砂の側近であり、情報提供者であり、本当に彼は僕と同い歳なんだろうかと疑うくらい仕事が出来る奴であり底知れぬ腹黒さを感じる男である。
今もこんな風に仲睦まじく微笑ましく話している僕らだが、僕と彼の間に��信頼関係��という和やかな関係性などない。彼の事だから多分僕のことは利用できるカモという認識だろう。酷い男である。
『ていうかここはショッピングモールの中の文房具店だ。あまりこういう所で口説くな』
「それはそれは失礼しました。Aさんの姿が見えたのでいち早く秘めていた想いを伝えたいと思い」
『その秘めた想いとやらはトイレにでも流しとけ』
「相変わらず女性らしからぬ口の悪さですね」
『こんなこと、君にしか言わないよ』
「え、やだ照れます」
『頬を赤らめるな』
どうも他校の人達は扱い難い。
彼のことは無視をして書きやすそうなシャーペンに手を伸ばそうとした時だった。
突然横から伸びてきた七種茨の手が僕の手を掴んだのだ。
「そういえばAさん、今日も今日とていろんな男性の方とお話ししたようですね」
『君と話してる』
「自分を含めないでください。そうですねぇ……ざっと１０人」
クラスメイトの明星スバル、氷鷹北斗、遊木真、乙狩アドニス、神崎颯馬、ナンパしてきた羽風薫、生徒会長の天祥院英智、木から落ちた仙石忍、ちょっかい出しに来た佐賀美陣、様子を見にきた椚章臣。
「正確には１１人」
電話してきた祖父。
『君ってエスパーだったんだな』
「目を合わせてくださいAさん。自分は心配なんですよ。Aさんがどこぞの飢えた狼にいつか喰い殺されるのではないかと。そう思うと俺は夜しか眠れません」
『なら君が僕を守ればいいんじゃないか？』
「……なるほど」
『冗談に決まってんだろ』
「Aさんが飢えた狼に喰われる前に俺が狩猟者のように狩れば良いだけの話ですね！」
『血祭りになる前に僕は退散させてもらう』
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作者名：冬雪
| 作成日時：2019年4月17日 23時
