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染まれ染まれ。 9 ページ10

第一関節が後ろに折られたと思ったら、第二関節では真横へと折り曲げられたそれは、もはや使い物になりそうにない。
 古典的な方法を選んだが、情報を引き出すにはこれくらいで十分だった。
「情報引き出しご苦労さん!」
 兄のその言葉に、「どうも」と素っ気なく返す。
「じゃ、後は好きにしろよ!」
 その言葉を最後に、おそ松は通話を切った。
「うん……好きにさせてもらうよ」
 男へと目を向けながら、もう繋がっていない携帯電話へと呟くように言って、テーブルに置く。
 男が一松の視線に気づいて顔色を変えた。一松の目がギラリ、と一瞬光る。
「ねえ……、何でおまえが兄さんにキスされてるわけ?」
 男はその言葉を聞くと一瞬目を見開き、ふっ、と笑った。
 すぐに、男の顔がぶん殴られる。
「……何笑ってんの」
 拳を握りしめながら、一松は男を冷たく睨み付けた。
 男はそんな一松を一瞥すると、床に血を吐き捨てる。続けて、鼻につく、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべると喋り出した。
「ああ、気を悪くさせちゃったならごめんなぁ? ただ、さ」
 男は一旦そこで言葉を切ると、一松に笑いかけた。その目にはかすかに同情の色がある。
「趣味悪いなあって思ってさ」
 次の瞬間、男の体は、椅子ごと床へと転がった。
 衝撃音を立てた男が繋げられた椅子に即座に近寄ると、その顔を衝動のままに殴り続ける。
「兄さんを馬鹿にするな。おまえに何がわかるって言うんだ。そもそもなんでおまえなんかが兄さんに気にかけられてるんだよ! おれの方がよっぽどおまえなんかより兄さんの役に立つのに! なんで! なんでなんで!!」
 ただの八つ当たりだと、男の方もわかっているはずなのに、男はただそれでも口角を歪めながら殴られていた。


.


《兄さんに気にかけられて良いのは、おれ達家族だけなんだよ! おまえなんか気にかけられるような存在じゃないんだ! なのに、兄さんに気にかけられて、おまけにキスまで受けやがって! ……その上、兄さんまで馬鹿にしやがって! 調子乗ってんじゃねえよ!!》
 耳につけたイヤホンから一松の怒号が聞こえてくる。その中の独占欲を感じ取って、口元が緩んだ。
 思わず小さくふふ、と笑うと傍らの自分の右腕が冷たい目を向けてくる。
「何だよ、チョロ松ー。何か言いたげな顔しちゃってさー」
 イヤホンを外して、自分からそう声をかけると、チョロ松は諦めたようなけだるいため息を吐いた。

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設定タグ:おそ松さん , BL松 , 完全リクエスト制   
作品ジャンル:アニメ
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野口 - 今回のお話は、なんて言うか、さすが兄さんみたいな感じで、かくなるうえは!新星病みこわかわいい! 次回のお話もとても楽しみにしてます! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 読むの遅くなりましたが、今回も最高でした!パーカー松本当に好きで、自分好みの文章を書いてくださるAsterさんに、自分好みのお話を書いていただいて本当に嬉しいです! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» ありがとうございます! 更新が遅くなって申し訳ありません! 今回の話は全然自信が無いです……。時間を見つけてぼちぼち執筆していきますのでよろしくお願いします。 (2017年8月15日 18時) (レス) id: 6f6df49f3d (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新作おめでとうございます! (2017年1月19日 18時) (レス) id: 9a188fa29d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Aster | 作成日時:2017年1月13日 22時

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