染まれ染まれ。 2 ページ3
その顔を向けられる自分を想像して、一松は興奮してきた。上気した顔と、悦楽に満ちたため息を吐く一松の姿は、控えめに言っても気持ち悪い。
すると、ズボンのポケットが振動した。バイブ機能は本当に役に立つ。
すぐに仕事用の携帯電話、いわゆるガラケーを取りだし、通話に出る。最低限、電話とメールができればいいので、スマートフォンにするつもりはなかった。
トド松が怒った声で話しかけてくる。
「あっ、一松兄さん!? ちょっとあの馬鹿長男に伝えてくれる!? 「あいつを捕まえた」って! あの人、何度かけても電話に出ないんだけど!!」
「ヒヒッ……トッティーお怒りモード……」
「茶化さないで! とにかくよろしくね! すぐにそっちに帰るから!!」
「はいはい」
「じゃあね!!」
すぐに電話を切られ、ツーツー、と虚しい音が耳に聞こえてくる。
携帯電話を閉じると、ズボンのポケットに戻し、部屋を出る。
鍵をかけて、おそ松の元を目指して歩き出した。
「兄さん!」
目標を見つけて呼びかけると、立ち止まって振り返ってくれる。
「一松ー? どうしたー?」
間延びした声で答えることに強者の余裕が窺える。なのに安心させる穏やかな笑みを浮かべているアンバランスさが、不思議な魅力を作っていた。
「トド松から伝言。「あいつを捕まえた」って。電話に出ないって怒ってたよ」
トド松の伝言を伝えると、おそ松は困ったような顔をして言った。
「えーマジでえ? トドちゃんお怒りー?」
「ヒヒッ、プリンじゃ許してくれないレベルだったよ……」
「えー、まあ何とかなるか。一松伝言ありがとな」
「どういたしまして」
そんな会話をしていると、またズボンのポケットが振動しだした。
即座に取り出し電話に出ると、今度はおそ松の右腕である三男の尖った声が耳に入ってくる。
「ちょっと一松? トド松の奴が後片付けもしないで飛ばしていったんだけど?」
「おそ松兄さんが電話に出ないからすっかり激おこなんだよ、チョロ松兄さん」
「あ、そうなんだ……てか、一松が激おことか言うと普通に似合わなくて気持ち悪いな」
「ヒヒッ、あざーす」
思いがけなく罵倒が飛んできて、お礼を言うと、チョロ松が呆れた声になって言う。
「いや、喜ばせるつもりなかったんだけど? 勝手に喜ばないでくれる? 気分悪いんだけど」
「いいねえ、チョロ松兄さん。その調子でもっと罵ってよ」
真性のドSらしく、無意識に罵るチョロ松に一松が礼を言う。
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野口 - 今回のお話は、なんて言うか、さすが兄さんみたいな感じで、かくなるうえは!新星病みこわかわいい! 次回のお話もとても楽しみにしてます! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 読むの遅くなりましたが、今回も最高でした!パーカー松本当に好きで、自分好みの文章を書いてくださるAsterさんに、自分好みのお話を書いていただいて本当に嬉しいです! (2017年11月14日 22時) (レス) id: 19852ab4e1 (このIDを非表示/違反報告)
Aster - 野口さん» ありがとうございます! 更新が遅くなって申し訳ありません! 今回の話は全然自信が無いです……。時間を見つけてぼちぼち執筆していきますのでよろしくお願いします。 (2017年8月15日 18時) (レス) id: 6f6df49f3d (このIDを非表示/違反報告)
野口 - 新作おめでとうございます! (2017年1月19日 18時) (レス) id: 9a188fa29d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Aster | 作成日時:2017年1月13日 22時