ちぐはぐ・モラトリアム (ページ9)

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Story9 ページ9

「はい、どーぞ」

「あ、ありがとう…」

俺は二宮くんから渡されたパックのジュースを受け取る。

俺達は二人で屋上に居た。

ベンチに腰を掛けると、春の風が頬をかすめて気持ちがいい。

「…ねえ、さっきの、……その、気をつけてって、どういう意味？」

俺は少し戸惑いつつ、隣に腰掛ける二宮くんに問いかける。

「要するに、野獣ってことだよ」

二宮くんは、チューっとストローでジュースを飲みつつ答える。

「野獣？」

「そ。あいつらみんな野獣。可愛い子に飢えてるの」

…でも、なんで、…なんでそれで俺が気をつけ無いといけないんだ？

腑に落ちない顔をしている俺を見て、二宮くんはクスクスと笑う。

「なんで俺が？って顔してんね」

「だって…」

「男だから？」

「う、ん…普通そういうのって対象は女の子でしょ？なんで俺なの？俺じゃ対象にならないでしょ」

「あ～、無自覚ね。なるほど」

二宮くんは俺の顔をまじまじと見て頷く。