ちぐはぐ・モラトリアム (ページ8)

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Story8 ページ8

…っ、もうだめだ…、

そう思ったとき、

「あ、先生、こんにちはー」

ドアの向こうから聞こえる声。

ハッと、俺を抑えていた彼の手が離れる。

その隙に、俺は慌てて扉を開けて外に出た。

彼は俺のあとに出て、慌ててトイレからいなくなる。

呆然と立ち尽くす俺。

そこには…「ね？だから言ったでしょ、気をつけてって」

「…二宮くん…」

呆れ顔をしつつ笑顔を見せる二宮くんを見て、なんだか足から力が抜けて、俺はへなへなと、その場にしゃがみこんでしまった。

「え、ちょっと、大丈夫？潤くん」

心配そうに駆け寄ってきて背中をさすってくれる。

「…びっくりしたぁ、」

そう言って小さく笑ってみせるが、まだ足は軽く震えている。

そんな俺を見て二宮くんは、少しの沈黙後、そう言ってそっと俺の頭を撫でた。

「…ごめんね、もう少し早く駆け付ければ良かったね」

さっき撫でられたときの感覚より、優しい手の感覚に、視界が歪むのを感じて慌てて拭った。