ちぐはぐ・モラトリアム (ページ16)

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Story16 ページ16

大野さんは何も無かったかのように、キャンパスの前に椅子を運び、腰掛ける。

「あ、あの…ありがとう、ございました」

何となく頭を下げる俺。

一応助けてもらった？し…。

「おう。…まあ、またいつでも来いよ」

「え？」

「こんな辺鄙(へんぴ)なとこ、めったに人来ねぇから、安心できんだろ」

大野さんはそういうと優しく笑った。

なんだか、ふにゃり、って効果音が似合いそう。

「でも、…ここって、美術室…ですよね？勝手に入っていいんですか、俺が」

「大丈夫大丈夫、俺、一応部長やってっから。美術部の」

「そうなんですか」

そう言われれば、先程の絵の凄さも頷ける。

「まあ、名ばかりだけどな、お前の為に部長の特権使ってやるから、いつでも来いよ。どうせ他の部員も、来たい時に適当に来て描いてくだけだから」

名ばかりの部長の特権て…。

おもずその言葉にくすっと笑ってしまう。