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羅唯人の元からどう逃げ出すか。僕の頭はその考えでいっぱいだった。
彼は日曜の昼に決まって外出をする。その隙を突いて逃走するのが一番良い。
でも、発信機とかそれこそGPSを付けられたりしていたらどうしよう。
一応念の為、逃げる時にスマホは置いて行こう。
鎖を解く方法も分かったし後は時期さえ待てば……
その日はわりと早く来た。
日曜日では無いのに羅唯人は出掛ける準備をしている。
「出掛けてくるねぇ」
そう言って上機嫌で羅唯人は家を出た。二、三時間は帰ってこない筈だ。
羅唯人が家から出て三十分後くらいに鎖を外し窓から飛び降りる。
そのまま全速力で交番を探す。
けれど僕はこの辺りの土地勘に詳しくなく、学校に向かおうと考えた。
学校の所まで走って行くと、門の場所で土屋君に出会った。
「Aちゃん?」
驚いた様に僕を見る彼は、以前僕に告白をした人だ。
告白されてからずっと話していなかったから、少し気まずさは在った。
だが形振り構っていられない。僕は彼に担任の居場所を訊く。
「えっ、石崎先生?職員室じゃない?てかAちゃん、何でそんなに焦って……」
土屋君が僕に触れようと手を伸ばした時だった。
「あれぇ?何で此処に居るのかなぁ?」
聴き覚えのある尖った声がし、身体が硬直した。心臓がバクバクと早鐘を打つ。
土屋君は何も気付かず彼に話し掛ける。
「あ、四ノ宮君。丁度良かった。彼女さんが困ってるっぽい」
「ほんと?ありがと」
羅唯人はニコリと屈託のない笑顔を土屋君に向ける。けど瞳の奥は赤い焔が揺らめいていた。
土屋君は苦笑を浮かべると立ち去ってしまった。
これから起こる最低最悪の事態に震えが止まらない。
「行っちゃったねぇ。残念だったね、もう少しで逃げられたのに」
悪魔の様な笑顔で話す彼が不気味で何も言えなかった。
震える僕の腕を羅唯人は強く掴むと、ニタァと嗤う。
「さ、帰ろうか。もう二度と逃げようなんて思わない様に、その身体に刻み付けてあげる」
綺麗な笑顔で言うセリフはとても残酷で、僕にとっては死刑宣告の様なモノだった。
「こんなに愛してるのに気付かないなんて、Aは馬鹿だねぇ」
ケタケタと嘲笑う彼に僕が言える事なんて一つもなく、地獄に連れ戻された。
その日から、羅唯人の言葉通り僕は逃げる事が出来なかった。
死ぬまで彼の隣で生き続けるのだと、そう
「ずうっと一緒だよ。死んでもねぇ」
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