彼の鎖で縛られて。 ページ6
ガチャガチャと鎖が鳴る音が部屋に木霊す。
早く、この鎖を外して逃げないと。彼が戻って来てしまう。
僕は必死に鎖を引き千切ろうとしたけど、時間が来てしまった。
「何してるの?」
低い声がドアの方から聞こえ反射的に振り返ると
「A、何してるの?まさか逃げようとしてたわけじゃないよねぇ?」
僕は怯えながらも精一杯首を横に振る。
「ち、違くて……!ト、トイレに行きたくて……!」
咄嗟に出た言い訳を彼は
「なぁんだ。じゃあ行こうか。今度長い鎖を買って来て上げるね」
彼は鎖を外しながらそう言う。矢張り解放してくれる気は無いらしい。
僕は恋人である羅唯人に監 禁されている。
元々束縛が激しい人だと思ってたけど他クラスの男子に告白されてから余計に酷くなった。
学校以外では羅唯人の家に監 禁され行動を制限されている。
トイレに入り用を足すフリをしながら今後の事を考える。
逃げようとすれば容赦なく殴られる。最終的には殺されるかもしれない。
大人しく従順にしていれば逃げられる機会は充分に有る。
「A?まだぁ?」
コンコンと強めに叩かれるノックに慌てて返事をしてレバーを引く。
トイレから出ると羅唯人はニタァと笑って抱きしめる。
「はぁ、俺だけの可愛いA。何処へも行かせないからねぇ?」
ねっとりと耳元で囁かれ背筋に寒気が走るのを耐え笑顔を作る。
けれど羅唯人は不愉快そうな表情になると、口を尖らせた。
「また作り笑いだねぇ。何がそんなに不満なの?」
こんな状況で不満を持たない方が可笑しくないだろうか。
でもそんな事羅唯人には言えない。言えば殺される。
「……不満なんて無いよ。上手に笑えなくてごめんね」
声を低く暗めにして顔を俯ければ羅唯人は焦った様に僕の頭を撫でる。
「ごめんねぇ。俺も言い過ぎたよ」
抱きしめられる腕に寄り掛かりながら、思う。
これで何処まで誤魔化しが効くかな。
刻一刻と迫る命のタイムリミットに、気持ちは焦るばかりだった。
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