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言葉を失ったままで居る僕に滉は不安を煽られたらしい。
「ごめん、もう女子と一緒に居たりしない。Aとだけしか一緒に居ないから、俺を捨てないで」
強く抱きしめられるその感触に好きという感情が自分の中から溢れ出して来た。
結局どう思っても滉を嫌いに成る事はなかった。
別れようかと考えても決断だけは出来なかった。
滉はずるいよ。そうやってずっと僕の事を縛り付ける。
君の泣き顔を見ると拒めなくなる。どうかこれが本心で有って欲しいと願いたくなる。
でも、もっとちゃんとした確約が欲しい。
僕以外の女子を絶つという明確な意志を見せて欲しい。じゃなきゃ安心出来ない。
「……僕以外の女の子と関係を絶てるの?」
そう訊くと滉はハッとした様に鞄の中を探り携帯を取り出す。
「俺はAしか要らない。それを証明するから、これを見て?」
見ると、僕以外の女子の連絡先を全て消して行った。
残ったのは親しい男友達と身内の連絡先だけ。
あんなに沢山有った筈の連絡先は綺麗に整理された。
「ラインもブロックした。ツイッターもインスタもだよ。ねぇA、だから俺と別れないで」
彼の行動を横で見守って居た僕は思わず首を傾げる。
僕は何時、彼に別れたいと告げただろうか。
浮気作戦が絶大な効果を齎したのは身に沁みて感じた。
あの滉が女関係を全て絶ったのが未だに信じられない。
でも、これで滉は僕のものだよね?
「……別れたりしないよ」
「ほんとに?響哉のとこへ行かない?」
必死に訊く滉が可笑しくて堪えきれずに笑ってしまった。
「あのさ……アレ、浮気のフリだよ」
「浮気の、フリ……?」
僕が言った言葉を滉は復唱し、意味を理解すると再度抱き着いて来る。
「良かったぁ……Aは俺のなんだね。響哉のじゃないんだね」
僕は頷き彼の背中に手を回した。
「A、俺さ……言葉で言い表せないくらいにAの事愛してる。もう絶対離さないから。ハグもキスも抱き締めるのもAだけにするから……Aも俺だけにしかしないで」
「ん、分かった」
僕が了承すると滉は安堵の息を吐く。
やっと僕だけの恋人になった彼を、僕も離したくない。
散々放って置かれてたけど、彼の気持ちを確認したからもう大丈夫。
偶には浮気するのも良い薬に成るのかもしれないと、僕は思った。
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