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学園生活は決して楽しいとは言えなかった。
ヒロインのリリィはアラン様や他の攻略者達にベッタリでそれを見たくなくて極力会わないようにしていた。
そんな時、偶々通りかかった廊下の先にリリィを取り囲んでいる集団を見つけた。
リンチかしら……と思って近づくと令嬢達は罵詈雑言とも取れる言葉を彼女に浴びせている。
リリィは今にも泣きそうな顔で耐えていた。少しは反論くらいすれば良いのに。
「何をしているの?」
私が声を掛けると、令嬢達が蒼ざめた顔で固まった。
どうやら悪い事をした自覚は有るようね。
令嬢達に冷ややかな視線を向けながらリリィの前に立つ。
「怪我は無いようね。次こんな事をしたら覚悟しておきなさい」
リリィの安否を確認しつつ、彼女達に低い声で言うとリリィ以外の全員が震え上がった。
その時だった。複数の足音が此方に向かって来たのは。
ゲームの攻略者達が姿を見せると令嬢達の顔は土気色になる。
自業自得ではあるけど、こればかりはどうしようもないわね。
と、冷静に状況を分析している私に棘の様な視線が刺さる。
見れば、ヒーロー達が私を親の仇を見る目で見ていることに気付く。
何もしていないのに誤解されるのは不愉快だ。
思わず顔を顰めるとアラン様が感情を映さない瞳で私を見下ろす。
その表情は到底婚約者に向ける顔じゃなかった。
「ミシェル、彼女に何をしたんだ?」
ああ、貴方も私を疑うのね。判ってはいたけど胸が張り裂けそう。
「何もしていません。偶々通りかかったらリリィ様を責める彼女達を見かけただけです」
そこで沈黙が広がり、互いに無言のまま対峙しているとリリィがあの!と声を上げる。
「ミシェル様の言っている事は本当です。私を助けてくださいました」
彼女の言葉を信じた彼らは安堵の息を吐いた。
私は不快な想いを隠してなんとかその場から立ち去る事が出来た。
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