秘密の関係。 ページ17
ぼうっとしたまま窓の外を眺めていると授業の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
時計を確認した先生は持っていた教科書を閉じる。
「今日はここまで。さっき教えたところをよく覚えておくように。あと望月、ちょっと来い」
担任かつ学年主任の教師に呼び出された事でクラスメイトの好奇心を含んだ視線が突き刺さる。
無表情を保ったまま先生の後をついて行くと廊下の端で先生は立ち止まる。
「授業中殆どうわの空だったな。ちゃんと俺の話聴いてたか?」
どうやら授業態度が悪いと疑われているようなので先程の授業内容をつらつらと言い挙げる。
先生は呆れた様に片方の手で顔を覆い、お前さぁ……と軽く唸る。
「聴いているなら態度に示せ。他の先生から今の所苦情は来ていないけど、成績に関わって来るのはお前もマズイだろ」
諭すように言われ気まずさから目を逸らす。
他の先生から苦情は来ない。うわの空になるのはこの人の時だけだから。
橘先生は日本史の授業を担当しているイケメン教師。
顔良し、頭良し、性格良しと生徒達に大人気な先生なのだが……
「今日はクズじゃないんですね」
そう言うと先生にギロリと睨まれる。
橘先生のクズとドSっぷりを見たのは偶然だけどここまで面白くなるとは思わなかった。
先生のこういう所が好きなんだよなぁ……他は気に喰わないけど。
「俺の人生の中で最大の汚点は生徒のお前に見られた事だよ」
忌々しそうに言う橘先生を宥めようと両手を前に押し出す。
「まあまあ。そう気を落とさなくても良いじゃないですか」
「お前に言われたくない」
先生は美しい顔を盛大に歪めて苦々しげに言う。酷い言い様だな。
「逆に何で僕が先生の本性を他人にバラすと思うんですか?こんな面白い事を共有する筈が無いでしょう」
「お前のそういう所っていっそ清々しいよな」
橘先生は感心した様に言う。褒め言葉として受け取っておこう。
「……まあいい。次から授業態度改めろよ」
遠ざかっていく先生の後ろ姿を見送りながら、好きだって告白したらどんな反応をするのかと考える。
橘先生の本性、けっこうタイプなんだよね。
「どうすっかなー」
先生、貴方の心はどうしたら手に入りますか。
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