必殺技 ページ38
攻撃力に欠ける私と京治くんのダブルセッターに光太郎くんと日向くんのチームと、月島くんクロくん山口くんにリエーフの高身長組。
最初は不利に思えたが、ここ数日間組んでるだけあってこっちのグループの方が安定感はある。
それにどこからでもセットできるので攻撃の多彩さでは上だ。
赤葦「すみません、ちょっと短い！」
セットしたボールは光太郎くんの方へと向かうも、低めだ。
前には３枚の壁。
稀に見る冷静さで光太郎くんはわざとボールをブロックに当ててリバウンドさせた。
帰ってきたボールを綺麗にオーバーで私におくり、それを高い山形の弧を描かせるように上に押し返す。
ドガッと何かがえぐれたんじゃないかと言う音と共にボールは相手コートに叩き落される。
ブロックフォローに入っていた山口くんはぽかんと転がる球を見る。
かなりインナーだったから届かなかったようだ。
日向「さっきの！わざとですかっ？」
すごいすごいと天然おだて上手の日向くんは光太郎くんに詰め寄った。
もともと乗ってきていた調子が最高潮にまで行ったのか光太郎くんは顔を輝かせて説明を始める。慕ってくれる後輩嬉しい、って顔に書いてあるなぁ…
木兎「ヘイヘイヘーイ！じゃんじゃんあげてくれ、赤葦！篠原！」
何度目かのそのセリフに私達は頷く。
京治くんのサーブから始まり、再びラリーが続くのだった。
ーーーーーー
『山口くんはサーブを強化したいんだ？』
ゲームが終わったところで私の元にやってきた彼と話す。
山口「はい。
…俺以外の３人はスタメンに選ばれてて…それで武器が欲しいなって。
すみません、他校のマネさんに」
迷惑だったら、と続ける彼に首を振る。
全然構わないのだが、サーブだったらもっと上手い人もいるはずだ。
天才型だから教えられるかはわからないけど光太郎くんとか飛雄ちゃん。
山口「俺パワーがあるわけでもないし、才能もあるわけじゃない。
でも、努力はできるからぜひ篠原先輩のサーブを教わりたいって思って…」
なるほど。
確かにいつだったかこのサーブは練習したらできるって言ったな。
パワーが強くない者にとっての、味方。
フローターサーブ。
そりゃ、できれば上から叩き落としてさらに揺れたらいいのだけど、揺れるだけでかなり相手を惑わすことができる。
後輩に教えを請われるのはいつぶりだろうか。
私は少しワクワクしながらボールを手に取った。
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作者名：あやにゃん | 作成日時：2019年4月16日 0時
