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「おー、美味そう」
ご飯食べていく、と言ったがまさか作る羽目になるとは思っていなかった。
そして冷蔵庫にほぼ何も入っていないことも想像つかなかった。
結局、歩いて五分のスーパーに夕飯の材料を買いに行き、カレーを作っている過程。
「キヨ薄々気づいてたけどさ」
「ん?」
「野菜苦手だよね?」
「うっ…いやでもカレーとかは食えるし」
「うん。そうじゃなくて子どもが嫌いって言いそうな定番の野菜…?人参とか椎茸とか」
「…今更隠しても仕方ないから暴露するとAがきのこ類好きだって言った時味覚おかしいのかこいつって思った」
「キヨが子供舌なんでしょ。あとくっつかないで。危ない」
「あともう煮込むだけじゃん」
「人参いっぱい入れるからね」
「すみませんでした」
**
「あーもう食えないわ」
「ちょっと多めに作ったもんね」
時刻は19時。
カレーはまだ少し残っているが明日も食べれるし置いておけばいいだろう。
そろそろお暇しようと私は立ち上がった。
「もう帰んの?」
「もう19時だし…お母さん帰ってくるから」
「そっか。送ってく」
「え、いいよ」
ここからは二駅ほどかかる。
歩いて帰れない程ではないが一時間程度はかかる。
さすがにそれは申し訳なかった。
そう思ったから断ったのだが、キヨは不満を顔に表していた。
「なんで?」
「…じゃあ駅までお願いします」
「いや家まで送るから」
次からは自転車で来よう、と決心した日だった。
お金もかからないし。
**
電車を降りて暗い夜道を二人で歩く。
右手に感じる温もり。
手錠に繋がれていた時は左手だったから新鮮な気持ちで手を繋いでいた。
「Aってなんか部活入ってるんだっけ」
「え?えっと、部活は入ってないよ」
「ふーん。珍しいな。俺はサッカー部入ってたなー。じゃあ普段何してんの?」
「バイトとか…」
「え、バイトしてんの。何やってんの?」
「…喫茶店で…」
「ええ!?まじ?どこの店?」
「キヨ絶対来るつもりでしょ」
なんとなく分かっていたが、想像通りの展開すぎて不安になる。
(これだから言いたくなかったのに…)
教えないからね、と付け足すとキヨはあからさまにしゅんとしていた。
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作者名:巡 | 作成日時:2019年12月26日 12時