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「ただいま」
「お邪魔しまーす」

玄関からでも分かるチキンの良い匂い。
どうやら先に料理の準備をしてくれていたらしい。
私は手を洗ってお母さんに駆け寄った。

「お母さん、ゆっくりしてていいのに」
「Aだけじゃ大変でしょう?私がやりたいからいいの。あ、サラダ作ってくれる?」
「分かった」

きゅうり、レタス、トマト、それから卵を冷蔵庫から出す。
ミモザサラダがやはりいいだろうか。
そんなことを考えていると、ポンポン、と肩を叩かれた。

「オレはなにしたらいい?」
「座ってていいよ」
「えー…」
「キッチンそんな広くないし」
「はー…分かった」

キヨが渋々と床に座るのを見届けて、作業を始める。

「…あ、お湯沸騰してる」

**

「じゃあ一日はやいけど、誕生日おめでとう!A」
「ありがとう…キヨ」

色とりどりに並べられた料理を前にして、キヨとお母さんがおめでとう、と微笑む。

「A、これ」

キヨから手渡された小さい小箱。

「開けてみて」

ゆっくりと小箱を開けて、中を覗く。

「わあ…!」

綺麗な翠色のネックレス。
キヨがそれを手に取り、抱擁するように手を回す。
付けてくれてるんだと分かっても、やはり恥ずかしい。

「ん。すげー似合ってる」
「ありがとう…大事にするね。あ、でも…お昼ご飯奢ってもらってるのに…」
「誕生日とクリスマスは別だろ。素直に貰っとけ」
「うん。嬉しい…」
「良かったわね、A。ところで私がいること覚えてた?」
「あ、すみません、お義母さん…」
「お、お義母さん!?キヨ、いつの間にお母さんとそんな仲良く…」
「メル友だからねー?清川くん」
「はい」

驚いた。
ここ最近で一番驚いたかもしれない。
…自分の彼氏と母親が繋がってるってちょっと複雑な気分。

「ほら、Aもさっさと渡しちゃいなさい?」
「あ、うん」

お母さんに催促されて、私もキヨに小箱を渡す。

「…え」

キヨが驚いたように目を見開いた。
中に入っているのはシンプルな赤色をモチーフにしたネックレス。

「二人して同じもの買ってるなんてな…。サンキュ。付けてよ」
「恥ずかしいから嫌だ。お母さんいるし」
「私は気にしないわよ?」
「だってさ、ほら」
「しませんー。冷めちゃうから食べよ」

ちぇっ、と気に食わなさそうにキヨが声をあげた。

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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