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放課後。
私は自転車で河原へと急いだ。
この辺りだったはずと思う場所についてもダンボールは見えない。
もしかすると拾われたのだろうか。
それならそれで構わない。
私は来た道を戻ろうとペダルを踏み込んだ、その時だった。

「みゃあ」

猫の声。
確かに植え込みのほうから声が聞こえた。
私は自転車を止めて、植え込みに近づく。

「…あ」
「え?」

そっと覗き込んだ途端、私は声を上げてしまった。
そこに、昨日の黒髪の男性が猫に餌をあげていたからだ。

「…もしかして、この傘君の?」

そう言って、彼は私の傘を持ち上げた。

「そうです。あの、昨日はありがとうございました」
「いやいや。だからびしょびしょだったんだね」
「今傘持ってないんですけど…今度返しますね」
「ああ、別に気にしなくていいよ」

彼の腕の中にいる黒猫はぐったりとして私を見ていた。

「…この猫さ、俺が引き取ろうと思う」
「そう、ですか。良かったです」

この猫はきっとあの黒猫ではない。
そのはずなのに。
私はあの、と言葉を紡いでいた。

「連絡先交換しても構いませんか?傘も返したいですし、その…」
「猫、気になる?」
「はい」
「いいよ」

彼は快く了承してくれた。
ピコン、と通知が鳴り、[フジ]とアカウントが浮かぶ。

「フジ…さん」
「うん。よろしく、Aちゃん」

彼と少し話した後、また連絡すると告げ、その日は別れた。

**

「この前さ、JKと連絡先交換した」
「は?」

フジが突然、訳の分からないことを言い出した。
いや、こいつがよく分からないのは日常茶飯事か。

「いや、この前雨降った日さ、びしょびしょだった女の子がいてね。その子に傘あげたら昨日再会してさ」
「で、交換したと」
「そゆこと」

なんか、デジャブってる気がする。

「なあ、そいつの名前なに?」
「え?Aちゃんだったかな」
「……」
「え?まさか」
「俺の彼女だわ」
「え、まじで!?あの子が!?」

大声をあげるフジに食堂にいた半数の目が集まる。
いや、俺も驚いたが。

「はー。確かに可愛かったけど」
「は?お前に言われなくても分かっとるわ」
「はいはい」

それにしても、あれだけ注意しろと言ったのに。
フジだから良かったもののAにはもう少し釘を刺しておかなければいけない。

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作者名: | 作成日時:2019年12月26日 12時

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