染まるよ。 (ページ11)

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なんでもないページ11

「江口さん顔耳真っ赤！笑」
「やられたわ！！何！？もうそのピザもらうから！」
「あ！最後の一口！なんで食べるんですか！」
「一枚上手に出たのが駄目でしたね！てかまた来ればいいじゃん？」

そう言うと、セトちゃんの顔が曇る。
どうした？と聞いても、なんでもないですっていつもの顔で返すから、
逆に少し引っかかった。

楽しい時間は仕事より流れる速度が速い。
秋と冬の境に吹く冷たい風に当たりながら二人並んで帰る。

「セトちゃんにこの時期の夜を歩くのが好きって言われてから、俺もよく歩く様になったな～」
「なんか良いですよね。浸れるっていうか笑」
「……気になってること聞いていい？」
「なんですか？頭皮のこと？」
「違うわ！いやそれもあるけど……

…隠してること……ある？」
「え？」
「いや、なんていうか、俺はセトちゃんの彼氏でもなんでもないんだけど！なんか、さっきまた来ようって言ったときの顔が…うん」

なんのことかすぐにわかったらしい
また顔が曇った

普段の自分は人に干渉なんかしないし、なにかあっても空気を読んで話題を避ける。
だけど何故か聞いてしまった。
確実なのは、俺は今なんで言ったんだろうって後悔してること。

横にセトちゃんがいないことに気づき、踵を返す。
うつむき思いつめたような顔をしているから、近寄ろうとすると

「……しばらく、江口さんと距離を……置きたい、です。」

「………え…」

冷たい風が、強く吹いた。